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停滞期に入る中国と世界経済

みなさんこんにちは。

今の中国を見ていると、
バブル崩壊後の日本を思い出します。

日本の当局は不動産バブルをつぶすため、
当時、総量規制といわれる政策をとりました。

総量規制は不動産の狙い撃ちで、
それ以降不動産へのおカネの流入はパッタリ止まりました。

その結果、当局の目論見通り不動産相場は急落し、
借入によって不動産を買っていた多くの人たちは債務超過に陥りました。

生保や一般企業だけでなく、
たとえば普通に仕事をしていたサラリーマンや主婦までも、
大量の借り入れを起こして不動産を買い込んでいたため、
このバブル崩壊は深刻でした。

当時すでに高度成長期と呼ばれた時期は終わってしましたし、
人口動態を見ても日本は少子化・高齢化の時代に入ってゆきました。

バブル崩壊による債務の拡大に加え、
成長性の鈍化や少子高齢化の始まり。

このような悪い条件が重なって、
日本は30年にも及ぶ低成長時代にはいっていったのです。

そしていまちょうど同じことがお隣の中国で起きつつあります。

昨年習近平さんが唐突に打ち出した「共同富裕」によって、
不動産価格は下落に転じました。

ここ15年というもの中国経済の成長を支えてきた不動産業界ですが、
市況の悪化に伴って、軒並み債務超過の危機に陥りました。

注)中国の主要不動産会社11社を一体的に集計すると、
  保有する不動産の価格が3割下がるだけで債務超過に陥るとのことです。
  (日本経済新聞、2023年8月31日)

あわてた中国当局は、逆に不動産業界向け支援策を実施しましたが、
やりすぎれば共同富裕を打ち出した習近平さんのメンツが潰れます。

しかも不動産への蛇口を開けると、
いずれまたバブルに逆戻りです。

日本と違って市場や人口が大きいだけに、
この巨漢の体温をコントロールするのは簡単ではありません。

しかもこの不動産問題は、
中国が抱える諸問題の一つにすぎません。

たとえば若者の失業率です。

若年層に限ればすでに失業率は20%を超えており、
この数字は日本のバブル崩壊期と比べ格段に大きな数字です(注)。

注)日本の25-29歳の失業率を振り返ると、2004年のピーク時で
  約7%という数字がありますが、これは中国の20%より随分と低い数字です。

それにしても先月中国の当局が、突然「若年失業率」の発表をやめましたが、
やめたところで何も解決はしません、むしろ悪い数字を放置し、その原因を
考える機会が失われるのではないかと懸念します。

さらに急速に進む少子高齢化も、
大きな問題です。

すでに中国の生産年齢人口は2013年をピークに減っていますが、
人口自体も2020年がピークでした。

しかも高齢化の速度は日本を上回っています。

かつて私たち日本人はイヤというほど知りましたが、
少子高齢化は経済の成長性に悪影響を与えます。

日本がそうであったように、
国民は将来の収入頭打ちを予想し消費を手控えるものです。

加えて社会保障制度が未整備な中国は、
日本より深刻な需要不足=デフレに直面するでしょう。

「需要が足りないなら、政府が需要を作ればいい」
この考えが公共投資の発想ですが、
中国はここ10年以上もインフラ投資を先食いし、
すでに日本と同じく政府の債務は急速に拡大中です。

注)地方政府の別動隊「融資平台」ぶんを含む

以上みてきましたように、
中国の経済はすでにピークを過ぎ、
これから長い衰退期に入ると僕は思います。

この点については、
よい面と悪い面があります。

中国が安定した「普通の国」に戻ることにより、
特に周辺国へのストレスは緩和されると思います、
東アジアの地政学な緊張もやや緩和の傾向ではないでしょうか。

これは中国ピークアウトの良い面ですが、
一方で悪い面もあります。

それは世界経済や日本に与える経済面での悪影響です。

上の問題、たとえば

・不動産バブルの崩壊
・少子高齢化による需要不足→デフレ
・「融資平台」の隠れ借金問題

は、いずれも中国国内の問題ですが、
世界の経済はつながっています。

特にリーマン・ショック以降の中国が、
その旺盛な需要や経済成長によって、
世界経済をけん引してきた事実は無視できません。

これから3年、5年・・・

徐々に中国経済は低成長に陥り、
世界経済をけん引する力を失うでしょう。

それだけ切り取ってみれば世界や日本の経済にとってマイナスですが、
よく考えてみればこの15年ほどが異常だったという見方もできます。

この間、中国は安い人件費を武器にして世界に低価格製品をバラまきました、
その恩恵で私たちも安い製品を使うことができましたが、一方でそれはデフレの
バラまきでもあったのです。

一番の被害者は隣に住む私たちで、
労働者は低賃金を強いられてきたといえるでしょう。

我が国のデフレの要因の一つは中国にあったと思います。

中国の低成長化は、
そんな異常な世界からの巻き戻しでもあります。

さらに先をみればインドやアセアンが続いています、
中国の停滞を、これらの国がカバーすることになるでしょう。

以上今回は予想される中国経済の停滞と、
世界経済への影響について考えてきました。

これからの世界はこれが新しい日常になると僕は思います。

 

では今回はこのへんで。

(2023年9月8日)




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