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2006年の株式投資戦略
皆さんこんにちは。
日本には数多くのエコノミストがいますが、数人の例外を除き私は彼らのほとんどを信用しない事にしています。その数人の例外の中に入る武者陵司さん(ドイツ証券)が昨日日経CNBCの中で興味深い話をしていました。

以下抜粋(日経CNBC番組より)

・日本の長期金利は先進諸国の中で突出して低い。
・投資家は調達金利と運用収益のギャップが儲けである。
・従って、調達金利の低い日本では、株や土地への投資は

先進諸外国の基準を超えて買われることに根拠がある。

簡単に言いますと、
例えば日本の株価はPERで見て(東証一部で)だいたい21倍前後まで買い進まれてきました。 これは欧州13倍前後、米国16倍前後 に比べると割高圏にあり、すでに買われすぎであるという見方がありますが、一方で日本の長期金利は1.5%前後、これに対して米国のそれは4.6%前後です。 仮に米国のように4.6%程度の高い金利でお金を調達したとすれば、少なくとも(例えば6%程度以上の)高い利回りで運用しなくては儲けを手にできないですよね。

では、6%程度の高い利回りを株式市場から得ようとすれば、どのような株に投資すればよいのでしょうか・・・・
そうですね、モノは安い価格で仕入れなけらば、儲けは大きくなりません。
株式投資にあてはめれば、高い利回りを得るために、それだけ安く株を仕入れなければならないことになります。
株価水準が高い・安いを表す代表的な指標はPERであります。
その国の平均PERが低ければ株価水準も割安で、平均PERが高ければ株価水準も割高だと言えます。 このようなわけで、米国のような高金利国の平均PERは低くなるわけです。

逆に我が国のような低金利国では、低いコストでお金を調達できる分、運用利回りも「そこそこ」でOKという事になります。
従って、平均PERはある程度高く(利回りは逆に低くなります)ても問題は無いということになるわけです。

さて仮にこの理論を採用するとして、我が国の平均PERは一体何倍程度が妥当なのでしょうか? 上記の武者さんは番組の中で30倍という目安をあげていらっしゃいましが、私もほぼ30倍程度は許容できると思っています。
理由は下記のようなものです(以下 複雑なので興味のない人は読み飛ばしてくださいね)

米国の株価と長期金利が仮に適正水準だと考えて

・現在の米国の長期金利は約4.6%
・同じく平均PERは約16倍
を基準にすれば
・PER(16倍)の逆数は6.25%、これは大雑把に言ってしまえば、投資家が
株式投資から得られる収益率は6.25%ということを意味してします。

・従って、長期金利とのギャップは6.25%-4.6%=1.65%
・これは株式投資から得られる利回り(6.25%)が調達金利(4.6%)
より1.65%高いことを意味しています。即ち利ざやが1.65%ということです。

これを日本の状況に当てはめれば
・日本の長期金利は1.5%
・従って、株式投資から得られる利回りは1.5%+1.65%=3.15%
である必要があります(利ざやは1.65%で世界的に共通だと考えています)。

・従って、PERは1÷3.15%=31.7倍

となるわけです。恐らく武者さんも同じ計算過程でPER30倍を導いていらっしゃると思います。

仮にPER30倍ですと、日経平均は20,000円前後になります。
不動産投資についても同じような事がいえます。
日本の不動産投資から得られる平均的な収益率は3.5%から4.0%程度でね。

これに対し、米国や豪州では5%から7%程度でしょうか。
なぜ、日本の不動産の収益率が海外のそれより低いのに、外資は競って日本の不動産を買っているのでしょうか?
このギャップも調達金利の差で妥当性を証明することが出来ます。
ただし、株にしても不動産にしても長期金利の上昇には注意が必要です、例えば上記の試算での調達金利を仮に2.0%として計算しなおすと、日本の妥当PERは27倍程度に下がります。
これが調達金利3.0%として考えれば、PERは21.5倍となり現在の株価水準が妥当という事になるわけです。

今後の日本の株式市場が長期金利3.0%をどの時点で織り込み始めるか・・・
あるいは長期金利3.0%の世界では当然景気も相当拡大しており、企業業績に対してはプラスに働きますのでPER21倍と仮定しても、株価水準は20,000円超え、更に高くなる可能性も無くはないと思います。
今回は(特に)理屈っぽく、また長々と書いてしまいましたが来年の日本株の動向について考える場合、金利の動向を見て置くことの重要性をご理解いただきたく書かせて頂きました。
私自身は来年の株式相場は上昇する長期金利と、企業業績の拡大の微妙なバランスの中で予測してゆかなければならないと思っています。
では 今回はこのへんで。

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