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エコノミストの罪
皆さんこんにちは。
たかが民間のエコノミストの言う事だと、バカにしてはなりません。

時として、一握りのエコノミストの存在が一国の命運を左右する場合があります。
話は随分前に遡りますが、橋本・小渕政権の時代、当時の野村證券系のエコノミストだった、植草氏(例の)、リチャード・クー氏(こちらはまだ現役です)は盛んにマスコミに登場していました。
彼らの主張は一貫して。

・現在(当時)のデフレは『需給のギャップ』が本質的な原因で『需給ギャップ』を解消することでしか、デフレから脱却できない。

・『需給のギャップ』を解消するためには、公共投資を積極的に行い、需要を高めてやるしかない。

・(公共投資の拡大により)一時的に財政赤字が拡大しても、景気が回復するので税収が増え、長い目で見れば財政赤字は解消される。

というものでした、ここでいう『需給のギャップ』というのはモノやサービスを供給(生産)する能力が、必要とされているモノやサービスを上回っている状態のことを言います。

要するに、供給が需要を上回っているから、モノやサービスの値段がドンドンと下がっているというわけで、人為的に政府の支出(公共投資)を増やして、需要を高めてやれば、ギャップは埋まるだろうという安易な考え方に基づいています。
当時の橋本・小渕政権は全面的にこの考え方を取り入れ、さかんに公共投資を拡大し、ひたすら『需給のギャップ』の縮小に努めたわけです。
特に橋本政権末期には、一時リチャード・クー氏を政府の顧問に迎え入れようとしたほど、この考え方に傾斜した時期もありました(幸い橋本政権は、この人事を実行に移す前に倒れましたが・・・)。

続く小渕政権では、この傾向にさらに拍車がかかることになります。
小渕首相の在任中、ほぼ全ての期間を通じ、この公共投資拡大政策を全面的に採用し、結果として我が国の財政赤字は記録的な勢いで増え続け、もはや維持不可能といわれるまで拡大してしまいました。

全く、恐ろしい道を私たちは歩いてきたわけです。

この問題の原因はまことに根深いものがあり、彼ら一部の民間エコノミストのみに、その責任を押し付けることは出来ません。
たとえば、橋本政権にしろ小渕政権にしろ、田中角栄さんの日本列島改造論的なDNAを引き継いでいますので、むしろ積極的に一部のエコノミストを利用したという側面もあるでしょう。
そういった政治的な背景を割り引いて見たとしても、彼らの発言が世論に与えた影響は大きく、招いた結果は深刻であり、彼らの罪は大きいと言わざるを得ません。

今、現政権の経済運営をあれこれ非難するエコノミスト、評論家は大勢いますが、橋本・小渕政権において、いかに彼ら民間エコノミストが大きな災いを及ぼしたてきたか、この点についてしっかりと総括し、また反省をすべきではないでしょうか。
幸いにして、現政権においては、このような誤った政策を捨て去り、官主導の公共投資拡大路線から、民間活力主導型の『小さな政府』路線への転換が行われ、まさにそれが今結果を出そうとしています。

今から振り返れば、私たちは本当に危うい道を引き返してきたといえるのかもしれません。
そういうことを考えるにつけ、私たちにもエコノミストを選別する目が求められている、そういう気がするのです。

では 今回はこのへんで。

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