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選挙に勝ったのは誰か
みなさんこんにちは。

選挙に負けた菅さん・・・

選挙に負ける前、さかんに「増税による経済成長」を
唱えていましたね。

今回の選挙で、私は国民は必ずしも消費税アップを
嫌ったのではないと思います。

むしろ多くの国民は「増税による経済成長」という
理論に、ある種のいかがわしさを感じたのではないでしょうか。

もともと「増税による経済成長」は、昔から菅さんの
持論だったわけではありません、これは大阪大学教授の小野さん
の考えで、簡単に言えば以下のようなものです。

1.増税は経済にとってプラスでもマイナスでもない、
 なぜなら、それは家計が保有するお金を国が集め、
 それを市場に流すだけだからだ、流れたお金は
 やがて増税と同じ分量だけ、まわりまわって家計に戻る。
 従って増税自体は経済にとってプラスでもマイナスでもない。

2.さらに国が家計から吸い上げたお金を、特に「環境」「介護」
 「健康」などの分野に流してやると、これら分野で新規重要が
 生まれ、雇用が創出されることになる。

3.このように国が、増税によって主体的に経済に関与する
 ことにより、経済成長は実現できる。


皆さんも上記の考えに違和感をお持ちになると
思いますが、私も大きな違和感を覚えます。

まず第一に「介護」や「福祉」といった、どちらかと
言えば人海戦術が要求されるような分野で、投資の乗数効果
が生まれるかという点です。

上記小野理論によりますと、家計から吸い上げたお金の
総量だけ、またお金が家計に戻ってゆくことになっていますが、
「吸い上げたお金の量」=「家計に戻ってゆくお金の量」
であれば、国民の生活水準はそのままです。

「吸い上げたお金の量」≦「家計に戻ってゆくお金の量」
になって始めて増税によって経済が成長することになるはずです。

ところが小野理論のように「介護」や「福祉」が
投資の乗数効果をもたらし、吸い上げたお金の量以上の
富を波及的に国民経済に与えうるかという点を考えた場合、
私などはどう考えてもピントが外れているような気がして
なりません。

また経済循環のプロセスで、お金が滞留することを
考慮しておく必要もあり、そもそも「増税分のお金が全て
家計に返ってくる」という、小野氏の経済理論の根幹が、
机上の空論なのではないでしょうか。

さらにこれはよく言われていることですが、政府が決める
お金の使い方が適切であって始めて小野理論は完成する
のですが、そもそも日本の財政がここまで悪化したのは、
政府による『誤ったお金の使い方』に一因があったはずです。

そのような政府が『使い方を間違わない』という
ことが、果たしてありえるのでしょうか。

これらを総合して小野理論は、かなり心もとない
考え方だと私は思います。

一方で菅さんはそうでしょうか・・・

菅さんにも菅さんなりに、「小野理論を受け入れたい
都合」があったのではないかと私は考えています。

菅さんはもともと草の根活動のご出身ですから、
「介護」や「福祉」といった部分は専門領域のはずで、
政策もそこを外すわけにはいかないのではないでしょうか。

一方で最近経験した財務大臣時代に、日本の財政赤字問題に
はかなり危機感を持ったはずで、財政赤字を縮小するためには、
経済成長は欠かせないという点には気づいたはずです。

この二つの政策の同時実現・・・

即ち「介護・福祉」と「経済成長」の両立を実現できる論拠と
して、以前から懇意にしていた小野さんの理論を菅さんは
担ぎ出した。

・・・現実はそんなところではなかったでしょうか。

経緯はともかく、私はもし小野理論が菅さんによって
政策に組み込まれるようなことにでもなれば、日本にとって
極めて危険なことだと思います。

増税によって国民の可処分所得は減少するが、
そのお金は途中で滞留し、小野理論どおりには国民に返ってこない、
政府の予算は大きくなる一方で、放漫な支出は加速し
経済成長は止まり、財政赤字はさらに拡大・・・

へたをすれば、このような悪夢が待ち受けている可能性だって
あったわけです。

その意味で、今回の選挙における国民の
選択は正しかったのではないでしょうか。

もし民主党が勝っていたら、間違いなく小野理論は、
何らかの形で政策に組み入れられていたことでしょう。

やはり経済成長は、民間の企業の自由で公正な競争を通じて
実現されるべきであり、その結果税収が増え、財政赤字は
縮小に向かう・・・


むしろこれから日本は菅・小野理論とは真逆の
方向に進むべきではないでしょうか。

では、今回はこのへんで。
(2010年7月20日)




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