ホーム > T's資産運用コラム > 景気後退に備えるとすれば
景気後退に備えるとすれば

みなさんこんにちは。

ここ数週間、欧州や米国、そして我が国でも
財政上の不安が高まっており、多くの方から今後の対応に
ついて質問を受ける機会が増えています。

今回は、それらの問い合わせにお答えする
形でまとめさせて頂くことにします。



先週金曜日(7/15)欧州で、銀行に対して行った
ストレステストの結果が発表されました、これは昨年に続き、
90の銀行に対して行われたものです。

テストの基準は昨年よりやや厳しく設定されましたが、
結果は不合格が8行と、昨年から1行増えただけでした。

この結果だけをみると、欧州の金融システムは健全性を
維持しているようにもみえますが、市場の反応は否定的で、
株も通貨も反応薄でした。

市場が懸念しているのはギリシャやポルトガルが
万一破綻した場合の影響ですが、その点は今回のテストに
織り込まれていません。

この問題を想定に入れずに行った今回のテストは、
いかにも踏み込み不足で、かえってこの問題に対する、
欧州当局の腰の引け具合が浮き彫りになった格好です。

一方で大西洋を挟んだ米国の事情。

あいかわらず債務上限引き上げの合意に至らず、
8月初旬とみられる交渉期限にむけ、真夏のチキンレースが
展開されています。

米国が破綻した場合の影響の大きさを考えると、
この問題に関し何らかの合意に至る可能性が
極めて高いと言われていますし、私自身も同感です。

ただこの問題の根底には米国の財政赤字の拡大があり、
問題の基本的な構図は欧州の財政問題と同じです。
即ち目先の債務残高の上限引き上げが合意をみたとしても、
それで問題は解決したわけではなく、先送りされたに
過ぎません。

さらには太平洋を挟んだ日本。

もちろん日本にとっても財政問題は他人事ではありません、
いや考えようによっては欧州や米国に比べ、さらに状況は
厳しいといってよいでしょう。

日本の国債は過去の恩恵によって信用を維持しているだけで、
日本国内に新たな国債の買い手がいなくなった場合、一体この
国の経済はどうなってしまうのでしょうか・・とても心配です。

さらに日本の投資家には、一斉に同じ行動を取る傾向が
強くみれらますが、万一彼らが一斉に日本国債を売り始めた場合、
誰に歯止め役を期待すればよいのでしょうか。

よく考えてみると日本の財政赤字問題も、その根底には成長性の
鈍化という問題が横たわっており、その点において欧州や米国の
財政危機と構図は同じことがわかります。

つまり成長性の鈍化傾向は大西洋、太平洋を挟んだ先進国共通の
問題といえ、特に景気の後退期において先進国の財政赤字問題は、
これからも繰り返して世界を脅かしつづけるのではないか
と私は思うわけです。

いずれ新興国経済のプレゼンスが高まり、世界の経済に
新しい秩序ができるまで、この混沌の時代は続くのかもしれません。

その混沌のなかで、新しい経済の秩序がうまれ、そしてきっと
その枠のなかで、新しい通貨体制も確立されるのでしょう。

この新しい通貨体制への移行期には、金や銀、プラチナなどが、
信認の低下した先進国通貨の役割の一定部分を、肩代わりして
ゆくことになるでしょう。が、そう簡単に経済の新秩序が確立
されるとは思えず、移行期は相当長い期間にわたるのでは
ないかと思います。

農産物やエネルギーなどは、世界経済の後退の影響を大きく
うけますが、それでも新興国経済の地位の高まりは、長期的には
上昇要因です。数年に一度訪れる景気の後退期には、大きな下落に
見舞われるでしょうが、仮に金融不安が起きたとしても、レバレッジ
さえかけなければ無価値になることはありません。

同じ理由で新興国株もよいでしょう。

これらの資産は、世界経済の大きな構造転換を買うという意味で、
保有を続けるに値する金融商品といってよいでしょう。

一方でヘッジファンドは戦略によってマチマチで、吟味が必要です。
確かにヘッジファンドは、一般的に景気後退の影響を受けにくい
作りになっておりますが、なかには流動性に欠ける戦略もあります、
債券や複雑なデリバティブを組み入れたファンドはショックに
弱く、避けた方が無難ではないでしょうか。

その点でマネージド・フューチャーズは、2008年でストレステスト済み、
投資対象になりうるでしょう、マネージド・フューチャズ
は通貨の選択肢も広く、例えば金融混乱を意識されるのでしたら、
スイスフラン建てや、新興国通貨建てクラスに逃げておくのも
よいでしょう。

一方で金融システムに不安が生じた場合、おそらく次回のショックは
先進国の債券が発火点になる可能性が高く、その点で債券は投資から
外されたほうが無難ではないでしょうか、特に先進国の国債は
買えません。

同様に先進国株も怪我のもと、長期的な成長性も低く、仮に
がんばって景気後退期を持ち切ったとしても、その果実は
新興国株やコモディティに比べ小さいのではないでしょうか。



以上ながながと書いて参りましたが、
私はいまの段階で世界の景気後退期入りの時期に関して、
特定のイメージを持っているわけではありません、ましてや
目先すぐに後退期に入ると考えているわけでもありません。


ただ読者の皆さんのなかで、金融不安や景気後退期入りに対する
懸念を強くお持ちの方がいらっしゃれば、このようなことに
配慮してポートフォリオを組み換えを行って頂ければと思い、
そういう観点で私の考え方を書かせて頂きました。



では、今回はこのへんで。
(2011年7月19日)




このコラムが一週間早くお手元に届きます
当社代表の田中が週に一回お届けする無料メルマガ「一緒に歩もう! 小富豪への道」
は下記からご登録いただけます。

「T's資産運用コラム」と同じ内容を一週間早くご覧いただけます、是非ご登録ください。

【購読登録】 メールアドレスご入力ください :
『まぐまぐ!』から発行していますので、ご安心ください。
totop