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中国は成長を続けるのか

みなさんこんにちは。

いま私の机のうえに『2050年の世界』という本が
あります、この本はイギリスの「エコノミスト」という
雑誌の編集部が書いたもので、日本での発行は2012年の
8月となっています。

昨年の8月ですので、さほど古い本ではありません、
この一年間多少状況は変わっているかもしれませんが、
比較的新しいデータに基づいて書かれた本だといって
よいでしょう。

この本の273ページをみますと、かなり衝撃的な
データが紹介されています。

それは「アメリカを基準にすると、どのくらい豊かか」と題し、
主要国の一人当たりGDPを、米国を100にして指数化したものですが、
それによりますと、2010年は

・世界平均 22.7
・日本   71.8
・西ヨーロッパ 71.9
・中国   15.9

とあります、これが2030年になりますと

・世界平均 30.3
・日本   63.7
・西ヨーロッパ 71.3
・中国   32.0

さらに2050年では、なんと・・

・世界平均 42.3
・日本   58.3
・西ヨーロッパ 74.2
・中国   52.3

という具合です。

一人あたりのGDPといいますのは、まあ簡単にいってしまえば、
一人一人の豊かさのようなものです。米国を100としていますので、
100に近づくほど米国民に豊かさの点で近づくというわけです。

上記の推移をみますと、わが日本はその豊かさにおいて、
徐々に米国民との差が広がり、2050年時点では半分の豊かさにすぎません・・・
ここまでいけばもう「豊か」とは言えないでしょう。

一方で中国はといいますと、2050年には日本とほぼ
肩を並べる水準です。

エコノミスト誌がどのような推計によって、
このような数値を導き出したのか・・・そこはよく
解りませんが、私は上記はかなり無理がある数字では
ないかと思います。

まずこれは一般にすべての発展途上国に言えるのですが、
ある国が高度成長の軌道に乗った場合、一人当たりGDPが
一定の水準、すなわち1万ドルを超えたあたりで、
停滞期に入るケースがよくみられます。

この現象は主に、いままでの成長の原動力と
なってきた人件費が上昇し、世界市場において
価格競争力が維持できなくなることによって起きます。

これがよく「中所得国の罠」などと呼ばれる現象ですが、
新興国が先進国の仲間入りをするためには、
このハードルを超えなければならないわけです。

ではこのハードルを越えられる国と、
その手前で停滞してしまう国のあいだには
いったいどんな違いがあるのでしょうか。

この問題については、以前このメルマガでお話ししましたので、
詳しくは触れませんが、結論だけ申し上げますと、その国が
持っている政治や社会と密接な関係があるように思います。

例えば、企業が高い人件費や間接的なコストを転嫁しつつ
生産する製品が、世界的な競争に打ち勝って普及するためには、
自由かつ革新的なアイデアや、長期にわたる技術レベルの蓄積が
求められるはずです。

例えばかつて一世を風靡したウォークマンのソニーや、
iPadのアップルです。

このような企業が育って行くためには、経営者に
高いインセンティブを保証してあげなくてはなりません。

個人の所有権に対する絶対的な保証がなければ、
リスクを冒して起業する人はいません、
また政治が企業の活動に拘束を加えない自由度も、
競争力の前提になるといってよいでしょう。

つまり、

個人の財産権の保証、
政治から分離された自由な企業経営の保証、
斬新なアイデアの土壌となる、言論や表現の自由、
さらにいえば一時の気まぐれではなく、ほぼ未来永劫
そのような環境が維持されるであろうという見通し。

このような条件がすべてそろって、経営者や企業家は
安心して経営に専念でき、その結果はじめて人件費以外の競争力を、
一国の産業は持つことができるのではないでしょうか。

今の中国はご存知のように共産党による一党独裁で、
どう考えても上記のような条件を満たしているようにはみえません。

そのような観点で、再び冒頭のエコノミスト誌の推計です。

この推計は中国という国が、一人あたりのGDPという観点で、
先進国の仲間入りをするという前提で作られているようですが、
果たしてそうでしょうか。

かつてソ連という国があり、一時的に大国の一角を
占めていましたが、その後は皆さんご承知の通りです。

このような国では、国策によって一時的に経済が浮揚することは
あっても、長期的に豊かさを維持することは難しいのでは
ないかと私は思います。

 

では今回はこのへんで。

(2013年10月8日)




 




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