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貴金属かコインか

みなさんこんにちは。

今回はお約束通り、表題のテーマについて
お話しをしたいと思います。

確かに株や債券など、言わば「紙の資産」には
大変便利なところもあります。

なにより売り買いが簡単なのがいいですね。

株の場合は特にそうです、証券取引所という便利な
交換場所があり、市場が開いて切る限り、いつでも
投資家は株の売買ができます。

売買の容易さは売買コストの低さに直結しており、
ネット証券を使えば、一回当たりの売買コストは
数百円からです。

一方でこの便利さの裏を返せば、相場変動の激しさという
利用者にとって有難くない面がみえてしまいます。

売買が容易だから頻繁に売買する・・・
参加者の心理は一方行に傾き易く、大勢が一斉に同じ方向に
動くことにより、相場もまた行き過ぎる・・・

つまり売買の容易さは「紙の資産」の長所でもあり、
また同時に短所でもあると言えるでしょう。

一方で「現物資産」のほうはどうでしょうか。

確かに売買には一定の時間とコストが伴いますが、
それがかえってマネーの流入や流出を穏やかなものにし、
結果的に値動きを小さくしているという面があると思います。

さてその「現物資産」についてです。

僕は時々お客さんから以下のようなご質問を頂きます。

「金と金貨(注)では、どっちが投資にむいているのでしょうか」

注)ここでいう金貨とは、クラシック・コインの金貨のことで、
  例えばメイプルリーフのような地金型金貨(じがねがた金貨)
  ではありません、地金型金貨は形状としては確かに金貨では
  ありますが、その実態は金(Gold)そのものです。

この問題に対する答えを探すには、まず「金貨」の価値を
決めている要素について考える必要があります。

金貨には二つの価値があるといってよいでしょう。

一つ目は金属としての価値です。

一般に金貨は強度を保つため、金を主成分としつつ
例えば銅や銀といった金属を混ぜて作ります。

例えば日本の明治金貨は、90%の金と10%の
銅を混ぜて作られているといった具合です。

国や時代によって金の含有量に違いはありますが、
おおざっぱに申し上げると、金貨における金の
含有量は90%程度といってよいでしょう。

従って変動する金相場に連動して、金貨の価値もまた
上下動するといえます。

金貨が持つ二つ目の価値は希少性です。

先ほどと違ってこっちはやや複雑で、その金貨が持つ
稀少性は、さまざまな要素で決まります。

一般には

・残存枚数
・デザイン
・発行された国のステータス
・状態
・鋳造された年代

の5つが混然一体となり、その金貨の希少性を決めて
いるといってよいでしょう。

これら5つの条件が重なりますと、金貨は恐ろしいほどの
価格をつけることになるわけです。

では金価格と希少性、どっちのウエイトが高いのでしょうか。

結論から申し上げますと、圧倒的に後者という
ことになります。

例えば1860年代に作られた、フランスのナポレオン100フラン金貨
を例にみてみましょう。

このコインのEF(極美品)クラスの価格は、まあおおざっぱに
申し上げて30万円程度です。

これに対しこのコインの重量は約32グラム、金の純度は90%
ですから、地金としての価値は139,000円(注1)となります。

注1)4840円×32グラム×90%≒139,000円

従ってこのコインの価格を要因分解いたしますと、
以下のようになるわけです。

□地金としての価格 139,000円
□希少価値 161,000円(注2)

注2)300,000円-139,000円=161,000円

ではもう少し値の張る金貨だとどうでしょうか?

お隣の国イギリス中世では、5ギニーという大型の金貨が
作られていました、例えば1700年代のアン女王時代に
作られた5ギニー金貨をみますと、この金貨のEFクラスの相場は
400万円ほど、重量は約41グラム、金の純度は約92%です。

従ってこの金貨の場合、地金としての価格は182,000円(注3)
ほどと計算できます。

注3)4840円×41グラム×92%≒182,000円

これに対してこのコインの相場は400万円ほどですから、
稀少価値のほうは約382万円というわけで、さきほどの
ナポレオン金貨の希少価値(約16万円)と比べ、雲泥の
差があることがわかります。

このように特に高額なクラシック・コインの場合、
価値の大半は稀少価値であり、コインの価格が高くなれば
なるほどこの傾向が強くなると言えるでしょう。

では上記2つのコインに関し、実際に金相場がコインの
価値に与える影響度をみてみましょう。

仮に金の価格が30%下がったとすればどうでしょうか。

ナポレオン100フランの場合、コインの価格に占める地金価値の
比率は約46%(注4)です。

注4)139,000円÷300,000円≒46%

従ってその46%部分が30%値下がっても、コインの価値は
約14%(注5)の値下がりにとどまるわけです。

注5)46%×30%≒14%

これに対して5ギニーはどうでしょうか。

5ギニーの場合、地金の価値はコインの4.5%(注6)ほどと
計算できます。

注6)18万円÷400万円=4.5%

その4.5%が30%下がったところで、コインの価値は
僅か1.4%ほど(注7)の下落にすぎません。

注7)4.5%×30%≒1.4%

このことから言えるのは、そもそもクラシック・コインは
金の価格が上下しても、さほど価格に影響を受けないということ、
さらに言えばその傾向は高額なコインになればなるほど顕著に
現われるということです。

金の価格は景気やドル紙幣の総量の影響を
強く受けることになりますが、上記の試算で
わかるように金貨の場合は違います。

一言で申し上げれば、金貨の価格を決める主な要因は
金価格ではなく、むしろそのコイン固有の希少性にあると
いってよいでしょう。

さらに言えばクラシック・コインは、再生産は効きません、
いったん収集家の手に収まってしまいますと、
なかなか市場にあらわれることもありません。

かくしてコインの希少性は徐々に高まり、コレクターがその
希少性に支払う対価もまた大きくなってゆくことになるでしょう。

 

では今回はこのへんで。

(2015年9月28日)




 




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