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■マネージド・フューチャーズの使い方(その5)

WファンドはDavid Hardingにより開発されたマネージド・フューチャーズのプログラムです、
彼はマネージド・フューチャーズの草分けであるMan 社のAプログラムを開発したメンバーの一人ですが、
同プログラム開発後、独立しW社 を設立しました、1997年のことです。
以来一貫してマネージド・フューチャーズに特化した運用を行い、いまでは運用資産総額は約1兆4千億円(2011年初時点)に
達する、世界三位の規模のマネージド・フューチャーズに育て上げました。

このように2007年から2008年にかけ、数多くのヘッジファンドがサブプライム・ショックの波に飲み込まれるなか、
ある種のヘッジファンド群はその真価を発揮しました。いわゆるマネージド・フューチャーズと呼ばれるヘッジファンド戦略です。

(Wファンド設定来の年間実績推移)

(弊社作成、縦軸は各年のリターン、横軸は年度)


まずはじめにWファンドが何を投資対象にしているかみておきましょう、
マネージド・フューチャーズはその名が示すように上場された先物市場で運用が行われています、
先物市場は大きく分けて金融系の先物市場と、商品(コモディティ)系の先物市場に大別することができますが、
一般的にマネージド・フューチャーズは金融先物・商品先物双方で運用が行われます。金融先物市場はさらに株式、
債券、金利、為替の各市場に分類することができますが、例えば株式先物といっても、
日経225指数の先物もあればNYダウ指数の先物もあるというように、市場では実にさまざまな株式指数の先物が
日々取り引きされています、債券先物にしても米国財務省証券もあれば、カナダ国債もあるといったように多種多様です。
為替にしても円/ドルもあれば、ドル/ユーロもあるといった具合でこちらも多種多様、要するにこのような多種多様の
金融先物市場から選別を行って投資を行っているということです。一方で商品先物市場でも同様のことがいえます、
商品先物市場と聞けば多くの皆さんは、原油先物市場を思い出すでしょうが、原油だけをとらえても
ニューヨーク商品取引所に上場するWTIもあれば、ロンドンで取引が行われる北海ブレントもあります、
もちろん原油以外でも金、銀、プラチナなどの貴金属、銅やアルミニウムなどのベースメタル、
あるいは天然ゴムから豚バラ肉に至るまで、ありとあらゆる上場された商品先物が投資対象になるわけです。

ご参考までに、現在Wファンドが投資対象にしている先物をいくつかピックアップさせて頂きます。

□金融先物
・豪州国債(10年物)
・豪州国債(3年物)
・ドイツ国債
・アムステルダム株式指数
・ダウジョーンズ/ユーロストックス銀行
・日経225
・ハンセン指数
・豪ドル/円
・ユーロ/ポンド
・ユーロ・ドル
・ユーリボー(国際金先)

□商品先物
・金
・銅
・プラチナ
・ニッケル
・原油
・軽油
・トウモロコシ
・小麦
・オレンジジューズ
・木材
・豚バラ肉

もちろんこれらはほんの一例です、これだけをみても実に幅広い市場を使っていることがわかりますが、
Wファンドは現在120以上の市場で運用を行っています。さらに投資対象をカテゴリー別に分けたものが下記グラフです。

(Wファンド証拠金配分比率)

(Wファンド2010年12月報告書に基づいて弊社作成)


一見してお解りのように、商品系先物に対して金融系の先物が圧倒的に高い比率を占めていることがわかりますが、
これがWファンドに代表される大型マネージド・フューチャーズにみられる共通の特徴(注)といえるかもしれません。

(注)一般に運用資産総額の大きなマネージド・フューチャーズの投資対象は、為替や株式指数など金融先物市場が
中心になる傾向があります、これは金融先物市場が商品先物市場に比べ市場規模が大きく、
そのことによって自分自身の持つポジションで市場自体を歪めてしまう弊害を避けるためです、
また2009年に入り、アメリカやイギリスの監督当局により、商品先物市場での買い持ち高に対する規制が
導入されつつあることも一因と思われます。

では次にWファンドはどのような運用手法をとっているのでしょうか、その点について少し掘り下げてみたいと思います、
先ほど述べたようにマネージド・フューチャーズはトレンドに対して逆張りは行わず、上昇相場に対しては買い、
下落相場に対しては売りで対応します、先物に買いを入れている状態で相場が上昇しますと、
当然ながら利益を上げることができますが、逆に相場の下落時に先物の売りを保有しておきますと、
相場が下がれば下がるほど大きく利益をあげることができます。従って相場が上昇しようが下落しようが関係なく収益を上げる
ことができますが、よいことばかりかと言いますと、決してそうではありません。
当然のことながらの下記(グラフ3-4)中の相場の転換点では、大きく損失を計上することになります。
また相場が上にも下にも大きく振れないような展開はあまり好ましくありません、売り買いを繰り返すのみで売買コストが膨らみ、
結果的にリターンはややマイナス傾向となってしまうからです。ただ株やコモディティなどと違って、
相場の上下動とは関係なく収益をあげることができますので、本質的に景気変動の影響を受けにくい仕組みといえるでしょう。


さて上記のチャートをご覧になって皆さんは何か疑問をお感じにならないでしょうか・・・
上昇相場や下落相場では稼げるが、相場の転換点で大きく損失を計上するとすれば、今までに稼いだ利益を
相場の転換点ですべて放出してしまうのではないか、このような疑問をお感じになる方も多いのではないでしょうか。
マネージド・フューチャーズは確かにそのような問題抱えており、逆にいえばWファンドが長期的にリターンをあげるためには、
いかにしてトレンドが継続しているときに大きく稼ぎ、トレンドの転換点の損失を小さくするかという点が重要だということになります。
さらには市場では上記のような大きなトレンド転換とは別に、短期的な(例えば数日程度の)小さなブレは常に起きています、
これらの小さなブレが起きるたび、売りから買いに、買いから売りにポジションを移していれば、
結局は相場に振り回されて長期的なリターンを得ることはできません、上記のようなチャートを見ると、
マネージド・フューチャーズの運用はシンプルで容易なものにみえるかもしれませんが、何をもってトレンドの出現を認識し、
あるいは何をもってトレンド転換と認識させるのか、これはマネージド・フューチャーズにとって、運用の成否を分ける生命線と
いってよいでしょう。マネージド・フューチャーズは生身の人間ではなく、一般的にはコンピューターによる100%システマティックな
運用が行われています、つまりは運用の成果はいかにしてコンピュータープログラムの性能を高めるかにかかっているわけです。
もちろん市場はいつも同じ動きをするわけではなく、時代の移り変わりとともに変化、いや進化いたします、
従って何をもってトレンドの出現と認識し、何をもってトレンド転換と認識するのか、プログラムの肝であるこの“認識”は
時代の変遷とともに変わり、それに合わせて日々プログラムをチューニングしてゆく必要がでてくるわけです。
あるいはトレンドの形状と市場のボラティリティについても同様です、一般にマネージド・フューチャーズによる運用プログラムは、
トレンドの初期では大きなポジションをとることは避け、トレンドの継続とともにポジションを徐々に傾けてゆく手法をとりますが、
相場の形状自体が時代とともに変質してゆく傾向にある現在、過去の成功は将来の成功を約束するものではありません。


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