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■商品相場にもサイクル性がある

2−3で新興国株のサイクル性についてお話しましたが、もちろんコモディティ相場にもサイクル性はあります。景気か回復し需要が高まりますとコモディティの価格は上昇しますし、逆に景気の後退局面では需要が減少しコモディティ価格も下落するといったように、コモディティ相場も景気の変動にそって大きく波を打つことになるわけです。下記は2000年以降のCRB指数の動きを表したチャートです。

2000年以降のCRB指数の動き
(2000年以降のCRB指数の動き)

米国の景気は2001年1月から11月にかけて景気後退を経験していますが、その間CRB指数も一時的に下落していることがわかります、また直近の米国景気後退については、まだ当局によって認定されていませんが、この原稿を書いている2010年3月現在では2009年第2四半期に景気は底をうったと考えられています、一方でCRB指数をみますと2008年7月に470台の史上最高値をつけ、その後急落し直近の安値は2009年2月で200ポイント前後となりました。CRB指数の下げは米国景気の山から少し遅れましたが、上げに転じた時期はほぼ米国景気の谷と重なっているといえるでしょう。このようにみますと、やはりコモディティ相場は世界の景気サイクルと連動しているといってよいのではないでしょうか。そういう意味では株と同じ性格をもっているともいえるのですが、例えば先進国の株価とCRB指数の推移を比べてみますと、これは2−3.新興国株のサイクル性をどう活用するかでも申し上げたのですが、2003年あたりを境に、CRB指数の動きは急に活発化しますし、また先進国株との連動性が高まってきます。そういう意味ではコモディティも新興国株と同じく、2003年あたりを機に世界のマネーがその投資先として認知しはじめたといえるのかもしれません。私はこのコモディティと株の、値動きの近似性は近年とみに顕著になりつつあるように思います、例えば直近の株とコモディティの転換点を整理してみますと下記のようになります。

株式相場のピーク
先進国のピークは概ね2007年8月
新興国のピークは概ね2007年11月

コモディティ相場のピーク
概ね2008年8月

株式相場のボトム
先進国のボトムは概ね2009年3月
新興国のボトムは概ね2008年11月

コモディティ相場のボトム
概ね2009年3月

ご覧のように前回の株とコモディティのピークの間には、約1年の時差があるのですが、続いて訪れたボトムではその差がほとんど目立たなくなっています。この現象が“たまたま”なのか、それとも今後もこのような傾向が続く前ぶれなのか・・・その点は私にもまだよくわかりませんが、新興国景気とコモディティ相場の連動性を考えれば、後者の可能性が高いのではないでしょうか。以前はコモディティと株の相関性は比較的低かったのですが、私たちはそれを過去の体験として忘れ去るべきなのかもしれませんね。

では分散投資によるリスク抑制という観点で、コモディティを保有することは意味があるのでしょうか。結論から先に申しあげると私はあると思います、と言いますのは先ほど金とプラチナについて述べましたように、全てのコモディティが同じように動くわけではありません、特に金は通貨代替機能がありますので、少し特異な動きをします。またプラチナや銀もある意味で絶対的な価値を持っていますので、金に似通った値動きをするようになるかもしれません。あるいは農産物もこれから数年にわたり慢性的な供給不足に陥る可能性がありますし、幸か不幸か景気の動きよりむしろ気候という気まぐれな要素に依存する部分が大きいですので、株との相関性は依然低めに抑えられる可能性があります。このように考えてまいりますと、本来はCRB指数やGSCI(注)といった、幅広くコモディティを集約した指数に連動する金融商品ではなく、むしろ貴金属や農産物といったセクターに連動するファンドを使ってポートフォリオに組み込んだほうが、より高い分散効果を得ることができるのではないでしょうか。さらにこういったセクター別の特性を理解したうえ、景気サイクルを無視して長期投資を貫徹するか、あるいは景気サイクルに合わせて乗り降りするか、いずれの方法を採るかご判断頂けるとよろしいのではないかと思います。

(注)GSCI: Goldman Sachs Commodity Index ゴールドマン・サックスが組成するコモディティの総合指数、
       エネルギーセクターの比率が約70%と高いのが特徴


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