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思いつくことなど

以前ここで青山文平さんを紹介させていただきました。

青山さんは1948年生まれ、経済関係の出版社に18年勤められたあと、
独立して経済分野のフリーライターをされていた方です。

初めて小説を書かれたのは1992年だそうです、
その後10年ほど純文学系の小説を書かれていましたが、
ピッタリ書くのをやめてしまわれました。

そのあたりの経緯は昨日読み終えた「かけおちる:文春文庫」の
あとがきでご本人が書かれていますが、なぜ小説をやめたのかは、
ふれられていません。

その後また10年ほど経った2010年にふたたび小説を書き始めたのですが、
僕が感心したのはその理由です。

これも「かけおちる:文春文庫」のあとがきでご本人が
書かれているのですが、再び小説を書き始めた理由として、
本人の言葉をそのまま紹介させて頂くと。

『多分に経済的理由です。』
『参考になるかどうか分からいけれど、勤続十八年の年金では
喰えません。たいへんだ、とかではなく、はっきりと喰えません。
奥さんは国民年金だけなので、独りになったら、もう絶対に喰えません。
十年間、小説の執筆とは無縁だった自分の指が突然動き出したのは、
その事実を数字で突き付けられた夜でした。そうしてできたのが
2011年の松本清張賞受賞作「白樺の樹の下で」です。』

だとのことです。

僕はこれを読んで感心しました、
青木さんほどの小説家なら、ご自分の才能に自信もあるでしょうし、
作品への自負もあるはずです。しかも当時すでにいくつかの賞を
受賞して名が通ったひとです。

そんな方が自分が小説を再開したのは経済的な理由によると、
なんのてらいもなく言い切ってしまうなんて・・・、

僕は青山さんの自分を飾らない正直な人柄に感心しましたし、
小説にも人柄が出ているように思います。

それでいて時代背景は丹念に調べられていますし、
経済にも精通されておいでです。

いままで『励み場』、『伊賀の残光、』、『鬼はもとより』、
『かけおちる』と4冊読んできましたが、まだまだ読んでいきたいと
思います。

皆さんもぜひ読んでみてください、
面白いですよ!

 

(2020年9月9日)






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