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金利の上昇で不動産はどう動くか
皆さんこんにちは。
先日、日銀が量的緩和解除を発表しました。
市場は、すでに今回の会合での量的緩和策の解除を織り込んでいたようで、金利、為替とも大きな動きはありませんでしたね。
ただ、これでいよいよ「金利の復活」を具体的な現実感として、私たちは肌で感じる事になります。

この事務所にご相談にお見えになるお客様でも、不動産やREITへの投資をお考えになっていらっしゃり、金利の上昇と不動産価格やREITの値動きについて関心をお持ちの方も多いようです。
今回は久しぶりに、金利の上昇が不動産やREITに与える影響について考えてみたいと思います。 その前に、現在不動産の価格がどのようにして市場で決められているかについて復習しておきましょう。

ここに年間の賃貸料収入が100万円の商業用ビル(仮に物件A)があるとします。
一方で、仮に債券に投資した場合、年間4%の利息収入を得ることが出来たとしましょう。
皆さんなら、物件Aにいくらの値をつけますか?
ここではお話を単純にするために、ビルのメンテナンス費や減価償却費などは一切考慮しないものとし、当初の賃料収入をずっと受け続ける事ができるとします、また、債券も必ず償還されると考えます。

以上の前提で考えますと、物件Aの価格は2500万円となります。
(100万円÷4%=2500万円)

このビルの価格が2500万円より高いと、利回りは4%を下回り皆さんは債券の方を買ってしまいますよね。

一方で2500万円より安いと、債券にくらべ有利に運用できますので買手が多くなり、それだけ物件Aの価格は高くなります。
結果として、2500万円という価格に収斂してゆくというわけです。

では、仮に今後我が国の金利が上昇し、債券の利回りが6%になったとすると、物件Aの価格はどう動くでしょうか?

答えは約1670万円(100万円÷6%=約1670万円)に下がってしまいます。

なぜかと言いますと、債券の利回りが上昇したのだから、不動産から得られるリターンもそれだけ高くならなければ投資する人がいなくりますよね。

その結果、不動産の価格は逆に安くなってしまうからです。
1670万円の不動産が毎年100万円の収益を生めば、収益率は年率6%となり、債券投資から得られるリターンと同じになります。

いかがでしょうか?今後我が国の金利が上昇すると、不動産の価格は下がってしまう事になるわけです。
もしこの通りだとしたら、急いで不動産を手放さなくてはなりませんね。

でも少し待ってください、お話はそれほど単純ではないのです。
通常金利の上昇は物価の上昇を伴ないます、従って、上記で設定した物件Aの賃貸料収入も100万円から徐々に上昇するはずです。
では、ここで仮に下記のような条件で、物件Aの価格についてもう一度考えてみましょう。

・金利6%(4%から2%上昇した)
・賃料上昇率2%(インフレ率を2%と考え、インフレ率と同じ割合で賃料が上昇すると考えた)

この場合の物件Aの価格は、当初の2500万円からどのように変化するのでしょうか?

答えは『2500万円のまま変わらず』です。
計算式:物件Aの価格=現在の賃貸料収入÷(金利-賃料上昇率)
(なぜこの式で計算できるかは、ここでは端折らせてください)

いかがでしょうか。この結果、たとえ金利が上昇したとしても、その上昇率(上記の例では2%)と同じ率で物価(賃貸料)が上昇すれば、不動産の価格に変化はないということになります。

上記の例では『A物件の賃貸料収入の上昇率』=『インフレ率』としましたが、実際には賃貸上昇率は物件により随分格差があります。
例えば、東京 丸の内、大手町、有楽町あたりでは2005年12月時点の賃貸料は、+3.8%(対2005年9月比)、同じく青山、新宿あたりでも+4.0%程度(同)となっております(2006年2月28日 日本経済新聞)。
インフレ率を相当上回るハイ・ペースで賃貸料収入が上昇しているといえますね。

一方で、地方都市では空室率はまだまだ高水準、賃料も下がり続けているようです。
不動産の賃貸料の上昇率は、そのエリアの集積度・利便性・生産する付加価値の大きさを表しております。
特に首都圏や名古屋、大阪あたりでは金利の上昇率を賃貸料の上昇率が上回るエリアも見られ、結果的にこのようなエリアに関してみれば、今後の金利の上昇を勘案しても、まだまだ不動産の価格の上昇の余地は高いと見ておいたほうがよいのかもしれません。

では今回はこのへんで。

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