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投機が好きな日本人、投機が好きな英国人
皆さんこんにちは。
人間の一生には成長の過程というものがありますね。
人は生まれ、思春期を迎え、成人し、結婚し、子を育て・・・このような過程を経て徐々に大人になってゆきます。
一国の国民の投資行動も、このような成長過程を経て徐々に成熟してゆくものなのかもしれません。

現在の日本人は、『投資』よりもよほど『投機』が好きな人たちのように見えます。
時代を遡れば、18世紀前半に世界に先駆けて堂島に創設された「米の先物取引市場」なども、日本人の投機好きな側面を表しているかもしれません。
そもそも米の先物取引市場は、米の作柄に影響されず買手と売り手の双方に、経済的な安定をもたらすために考案されたシステムですが、その後徐々にその本来の目的からはずれ、投機の器として利用されるようになってゆきます。

記憶に新しいところでは、1980年代後半に私たちが引き起こしたバブル経済なども、間違いなく日本人の投機好きな側面を示す一例として挙げていいでしょう。
あるいは、例のホリエモン事件で多少は下火になりましたが、現在でも書店に行けば、株のデイトレーディング本が山ほど積まれています・・・
やはり私たち日本人は、随分投機が好きな国民だと言ってよいのではないでしょうか。

では世界を見渡せばどうなのでしょう。
例えば英国、彼らはまるで成熟した大人のような投資行動をとっているように見えます。
英国人の年収は物価水準に比べ決して高いとは言えませんが、それでも私たち日本人から見れば、そこそこ豊かな生活を送っているようにみえます。
それにはいろいろな理由があると思うのですが、間違いなく理由の一つは資産運用にあるのではないかと私は思います。

実際にある英国人の知り合いに聞いたところ、彼らは若いうちからごく自然に生命保険型の年金プラン(中身はファンドで運用)などを活用し、将来の豊かな生活のための資産運用を、長期的視点にたって始めるといいます。
これは統計的なデータでも裏付ける事ができます。
例えば「生命保険料の世界ランキング」(2001年 生命保険ファクトブックより)を見ると、各国の支払い保険料の総額は下記のようになっています。

1位 米国 443,413(100万米ドル)
2位 日本 356,731(同)
3位 英国 152,717(同)

一見すると英国の支払い保険料は、米国や我が国に比べて少ないように見えますが、対GDP比で見ると
1位 英国 10.7%
2位 日本 8.9%
3位 韓国 8.7%

とダントツの1位になっています、さらに「家計の金融資産の構成」(2003年 日銀調査月報)を見ても、英国の場合
1位 保険・年金 54%
2位 現預金 23%
3位 株式・投信 18%

となっており、保険や年金で長期的な視野にたった資産運用を行う英国人の姿が浮き彫りになってきます。

日本の場合、生命保険というと掛け捨ての(貯蓄性のない)保険のイメージが強いですが、英国ではファンド・ラップ型の金融商品として活用されているようです。
では、彼ら英国人はいつごろからこのような投資スタンスを取り始めたのでしょうか。実は彼らにも投機に熱を上げた(若い)時代はありました。

17世紀から18世紀のヨーロッパは、まさにそのような『投機の時代』でもありました。
チューリップの球根が投機の対象になった時代(「チューリップ・バブル」)もありましたし、ありもしない詐欺まがいの会社の株に浮かれた時期(「南海泡沫事件」)もあったのです。
これらの投機的な時代を経験し、いわば民族としての投資に対する成熟度を徐々に高めた末、現在のような英国型の資産運用方法がカタチ作られたといえるのではないでしょうか。

一方で現在の日本はどうでしょうか・・・
バブル経済とその破綻、再び訪れたITバブルとその終息、そして性懲りもないデイトレ時代・・・これらをいくつも経験しながら、我々日本人も徐々に大人の投資ができる国民になろう模索いるのかもしれません。
時代の流れはヨーロッパの17世紀や18世紀当時と比べ、格段に早くなってきているように思います、我々日本人は資産運用という点でも急速に成長できる可能性が有るのではないでしょうか。

そして・・私たちはこれから少子高齢化時代を迎えます。
もしかすればこのスキルを身につけることは、私たち日本人が英国型の成熟した社会を作り上げるためにも、避けて通れない道なのかもしれません。

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