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仕組み債の仕組み
皆さんこんにちは。
突然ですが、仮にこのような宝くじがあったとして・・・皆さんなら購入されますか?

・一枚あたりの値段は300円で当選確率は999/1000
・当選金は120円、はずれたらもちろんゼロ

そもそもこのような宝くじは商品として成立しませんし、万が一あったとしても誰も買わないでしょうね。

でも、ここはあくまで過程として・・・この宝くじの期待リターンを計算してみましょう。

計算式は
(0円×1/1000)+(120円×999/1000)=119.88円

となります。

この宝くじを一種の金融商品だと考えた場合、この商品の期待収益率は

119.88円÷300円≒40%
40%-100%=-60%
従って-60%となり、かなり分のわるい金融商品だといえます。

では、先日まで売り出されていた「ジャンボ宝くじ」、これを金融商品としてみた場合、期待収益率は何%程度になっていると思われますか?
答えは約-60%です。

冒頭に設定した商品は期待収益率-60%、実際の宝くじも約-60%で大差はないのですが、にもかかわらず毎度毎度大安の日に、有楽町で交通整理が必要なほど宝くじが売れるのはなぜでしょうか・・・

これと同じようなことが現実の金融商品の世界でも起こっているのを、皆さんはご存知でしょうか。
皆さんは「仕組み債」という言葉を耳にされた事がありますか?
この商品、もともとの投資対象は例えば「国債復興開発銀行」などが発行する社債です。

これらもともともとの金融商品(原資産=社債)に対し、証券会社が複雑な仕組みを施し、原資産とはかけ離れた金融商品に仕立て直された加工品・・・おおざっぱに申し上げてこれが仕組み債です。
証券会社にとって、今日では普通に社債を売っていたのでは、手数料収入もたかだか知れていますし、また、他社との差別化も図りがたいという悩みも有ります。
対して、このような仕組み債は、投資家サイドから見た場合、その手数料(組成コスト)体系が理解しづらく、逆に申し上げればそれだけ厚い手数料を稼ぎ易いという魅力が証券会社側にはあるわけです。

代表的な商品「パワー・リバース・デュアル債」を例にとって、もう少し詳しく見てみましょう。
この商品は購入と償還は円建てで、償還時には円建てで元本が確保されます、保有期間中は基本的には金利が支払われますが、外貨での支払いとなります。
魅力的なのは為替レートが円安になるほど、受け取る金利は高くなるという仕組みです(逆に円高になれば、金利ゼロになる場合もあります)。
高度な金融技術を用い、レバレッジを効かせていますので、僅かな為替の変動でも金利は大きく動くというわけです。

このように魅力的な面は確かに有りますが、一方で投資家が支払う目に見えないコストもたくさんあります。
例えば、これらの商品は云わば一品注文、償還前に売却しようと考えても市場がありません、その分現金化のための手数料は高額で元本が半額以下になることもある(地銀の運用担当者)といいます。
他にも

・為替が円高に振れた場合、金利がゼロになる可能性もある。
・円安になれば強制的に繰り上げ償還されるので、円安時に本来得られるはずの為替差益が得られない。

このようなコストも投資家は負担することになります。

冒頭の二つの例は極端ではありますが、人は例え期待収益率が同程度であっても、ある商品には全く興味を示さず、ある商品には大いに購入意欲をそそられる場合が有ります・・・
そもそも仕組み債は一般的に「オプション」や「レバレッジ」など複雑な取引手法を組み合わせてはいますが、一つ一つ分解してゆくと、最終的には仕組み債の「原商品」である社債のリスク・リターンに辿りつくことになります。
さらに申し上げますと、証券会社や関係金融機関の取り分など(外部から見えないだけに、いくらで設定されているか・・・少し怖い)を差し引くと、理論上は原資産のリスク・リターンより有利であるはずはないのです。

今回は「仕組み債」を取り上げましたが、銀行が販売する「仕組み預金」なども同じような特性が有ります、外から解りづらい商品は特にそのコスト構造と、購入者が負担するコストについてしっかりと理解しなくてはなりません。
では 今回はこのへんで。

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