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住宅ローン〜繰り上げ返済の分岐点は?〜
皆さんこんにちは。
今回は久々に住宅ローンのお話しをさせて頂きます。

当事務所のお越しの方でも、住宅ローンの繰上げ返済を行うか、それともそのお金を運用に回すか、この点でお悩みの方が大勢いらっしゃいます。

仮に皆さんが今、借りれ額2200万円、返済期間35年、金利2.7%全期固定、このような住宅ローンをお組みになっていたとしますと、その総返済額は約3400万円となります。

ここでよく話題になるのは「繰り上げ返済」をしたほうが得なのか、それとも「資産運用」に回したほうが得なのか・・・「繰り上げ返済」と「資産運用」のいわゆる『分岐点』がどこにあるのかという問題です。

仮にあなたがこの『分岐点』以上のリターンで資産を運用する自信がおありなら、手持ちのお金は繰り上げ返済に回さず全額を資産運用に回すべきですし、その自信がないのでしたら手堅く繰り上げ返済を選ぶべきでしょう。

ではその『分岐点』、どうやって見つければよいのでしょう。

住宅ローンの世界は『単利』の世界(これは利子が利子を生む事は無いという意味です)、これに対して資産運用を行う場合、私達は一般的に『複利』の世界(利子は利子を生むということ)でモノゴトを考えなければなりません。

さらには、住宅ローンの場合は、毎月返済を行った部分については(当然ながら)その部分に対する利払いの必要は無くなってゆきます。

従って冒頭の例のように、年利2.7%の固定で住宅ローンを支払っている場合、『分岐点』=2.7% とこのように単純には参りません。

なぜなら『単利の世界』の2.7%と『複利の世界』の2.7%では、全くその価値が
違うからです。

冒頭の例を使って、少し具体的に考えてみましょう。

・元利均等償還
・35年払い、全期固定、年利2.7%
・当初借り入れ額 2200万円
・元利合計の総支払額 3400万円

仮にこのローンを一括で返済できるキャッシュ(2200万円)を持っていたとして、この例で『分岐点』はどこになると思われますか?

答えは 1.252%となります。

これは

「2200万円を複利で運用し、35年後に3400万円にするために必要な利回りは
年率1.252%」

という考えから算出できます。

なぜこういう算式が成り立つかといいますと、

1.2200万円を繰り上げ返済することにより、本来支出するはずだったお金
 (3400万円) を支払わなくてすむ。

2.言い換えれば、この2200万円は将来の3400万円の価値がある。

3.繰り上げ返済を行わない場合、手持ちの2200万円はこの3400万円以上に
 価値を高めなければならない。

4.即ち、手持ちの2200万円は35年後に3400万円以上に増やせるので
 あれば、繰上げ返済をせず運用に回したほうが有利。

という理屈からです。

従って、仮に年率1.252%以上で回せる自信があるのなら(仮にあなたが2200万円のキャッシュをお手持ちだとして)繰り上げ返済より資産運用を選択したほうが有利だという事
になります。

ただし、税金については注意が必要です。

仮にあなたが住宅ローンの繰上げ返済を行い、総支払額が先ほどの3400万円から2200万円に減額されたとしても、誰も文句を言ってきませんよね。

これに対し資産運用の結果、毎年34万円の利益が出たとしたら、その利益に対して源泉徴収が行われるか、利益を確定されるたび申告・納税しなくてはなりません(オフショア金融商品で運用し、仮に現地で非課税だったとしても、国内で申告・納税しなければそれは脱税ですヨ)。

金融資産に対する課税スタイルは、おそらく今後「金融商品に対する一体課税」議論のなかで、どの金融商品で利益を上げようが、一律20%程度の課税という方向に進むのではないでしょうか。

従って、今までお話してきた『分岐点』を計算する際には、多少のノリシロ(前記のような理由で概ね20%程度)をみておく必要があります。

さて、ここのところ日本の金利がやや上昇してきました。

ファイナンシャル・プランナーや経済評論家などはさかんに固定金利への借り換えや、ローンの繰上げ返済の必要性を説きますが、金利の上昇は一方でチャンスでもあります、長期固定の住宅ローンを抱えたまま、一方で手堅く資産を運用する、このような選択肢もいよいよ現実味を帯びてきたと言えるのかもしれません。

もちろん、人それぞれファイナンシャル・リテラシーに差がありますし、また、一定のリスクを取りに行くわけですから、性格的に向き、不向きの問題もあります・・・皆さんそれぞれ自分自身を冷静に見極めていただき、ご判断いただければと思います。

では 今回はこのへんで。

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