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毎月分配型の投信は本当に不利か
皆さん、こんにちは。

先週は地味な債券のお話を致しましたが、今回も同じく
地味なお話しをさせて頂こうと思います。

皆さんは債券型投信をお買いになったことがありますか?

債券型投信というのは、主に債券を投資対象にしたファンド
のことで、その代表選手としてグローバル・ソブリン・オープン
やダイワ・グローバル債券ファンドなどを挙げることができます。

これらのファンドのウリはいずれも毎月(あるいは定期的に)
高い分配金を出すところにあり、特に年金生活者などから
支持を得ているようです。

あまりにウケがよいので、各社こぞって同種の商品を出し、
今では債券型で、定期分配型でないファンドを探すことの
方が難しくなってしまいました。

さらに、この毎月分配病は債券型投信からREITファンドに伝染し、
今では株式投信やバランス型投信など、さまざまな商品にまで
広がってしまっているようですね。

ではこの毎月分配型の投信、私達にとってどのような利益を
もたらしてくれるのでしょうか、あるいはどのような問題点が
あるのでしょうか。

毎月分配型投信について専門家が批評する場合、まず肯定的な
見方をすることはなく、ほとんどは下記のような問題点を指摘たうえで、
否定的な評論を加えることが多いようです。

1.人間はずっと遠い将来の利益より、目先の利益を優先する
傾向が強く、これらの商品はこのような人間の心理の歪みを
利用した商品である。

2.これらファンドは、たとえ分配金再投資コースを選んだ場合でも、
毎月の分配金から自動的に20%(現在は10%)の源泉徴収を受け
てしまう、言い換えれば本来ファンドに期待される「税の繰り延べ
効果」が得られず、最終利回りは下がってしまう。

彼らの批評のほとんどはこの2点に集約できるわけですが、果たして
この批評は正しいのでしょうか・・・

確かに上記1のように、人間は目先の利益を優先する傾向にありますが、
そもそも年金生活者などにとっては、目先の生活費の確保は重要な
問題で、そのような人たちにとっては、この毎月分配型という
仕組みはうまくフィットしているように思います。

一方で2についてはどうでしょうか?

そもそも当面分配金の不要な人たちにとって、仮に
「分配金再投資コース」を選択した場合、「税の繰り延べ効果」
は得られず、税控除後の「実質利回り」が下がるのも事実です、
ただ、どの程度「実質利回り」が下がるのかの試算は今まで
私は目にしたことはありません。

そこで以下のような条件の下、毎月分配型と非分配型で
税控除後の「実質利回り」がどの程度差が出てくるか、
計算してみました。

条件設定

□運用開始時点の基準価格10,000円の「債券型投信」のイメージ
□2007年6月1日に運用開始、10年後の2017年5月31に売却

上記の設定で

ケース1:分配金として10年間毎月40円(注)が支払われるが、この分配金
はうけとらず、20%の源泉税徴収後(即ち32円)の金額が
再投資され継続運用される、なおこのファンドは運用から得られた
収益を全て分配する。

ケース2:分配金は発生しないが、運用期間が終了する2017年に、
当初出資額10,000円を上回った部分(収益部分)に対し、
20%が一度に課税される。ただし、このファンドの
運用成績はケース1と同じとする。

注)正確にいうと、前月末残高に0.4%を掛け合わせた額が分配される
と致します、従って厳密にいうと、この分配金は僅かづつ増えて
ゆくものと考えます。

言い換えれば「ケース1」は毎月分配型、「ケース2」は非分配型
ということになります、上記2通りの試算を行った結果、

・ケース1(毎月分配型)の10年後の資産残高は14672.46円
・ケース2(非分配型)の10年後の資産残高は14916.22円

でその差は243.76円、ケース2をケース1で割ると101.66%と
なりました、100を差し引いた1.66%が10年間の「税の繰り延べ効果」
ということになります。

さて、この結果をご覧になって皆さんはどうお感じになりました
でしょうか、私自身は10年間で得られる「税の繰り延べ効果」
が1.66%という結果は、予想より随分小さいという印象を受けました。

ではもう一つ別の条件設定で試算をしてみましょう。

条件設定

□運用開始時点の基準価格10,000円の「株式型投信」のイメージ
□2007年6月1日に運用開始、10年後の2017年5月31に売却
上記の設定で

ケース1:分配金として10年間毎月150円(注)が支払われるが、この分配金
はうけとらず、20%の源泉税徴収後(即ち120円)の金額が
再投資され継続運用される、なおこのファンドは運用から得られた
収益を全て分配する。

ケース2:分配金は発生しないが、運用期間が終了する2017年に、
当初出資額10,000円を上回った部分(収益部分)に対し、
20%が一度に課税されるただし、このファンドの
運用成績はケース1と同じとする。

注)正確にいうと、前月末残高に1.5%を掛け合わせた額が分配される
と致します、従って厳密にいうと、この分配金は僅かづつ増えて
ゆくものと考えます。

今回は(他の条件は変えず)毎月の分配金の額のみを変え、
150円と設定しました、想定したのはピクテのグロイン
(グローバル・インカム株式=株式型の投信です)のイメージです。

結果は

・ケース1(毎月分配型)の10年後の資産残高は41846.73円
・ケース2(非分配型)の10年後の資産残高は49754.58円

となりその差は7907.85円、ケース1÷ケース2=118.90%と
なりました、最初に行った債券型投信のケースで「税の繰り延べ効果」
はわずかに1.66%でしたが、今回の株式投信のケースでは18.90%
と大きな効果が出ているのがお解り頂けたと思います。

これらのことを要約いたしますと

□確かに毎月分配型投信は「税の繰り延べ効果」は得られず、
非分配型に比べ、税控除後の実質利回りは低く、不利な
商品といえる。

□しかしながら債券型投信のように、収益率の低い商品では、
毎月分配型と非分配型の差はほとんど無い。

□一方で株式を投資対象にした投信のように、高いリターンが
狙える投信の場合、「税の繰り延べ効果」は大きく、毎月分配型の
投信は圧倒的に不利である(10年間継続運用した場合、残高ベースで
20%近く開きが出る場合がある)。

(もちろん上記の試算は、毎月分配型投信の分配金を当面受け取る必要
がないケース、即ち分配金を再投資するケース、を前提にしていますが)

ということが言えるのではないでしょうか。

当面分配金を受け取る必要の無い方は、このようなことについても
考慮いただいたうえ、、株式投信や債券型投信をお買いになってみては
いかがでしょうか。



では 今回はこのへんで。





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