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実は怖い為替の動き
皆さん、こんにちは。

皆さん、最近海外の旅番組などを見ていると、海外の(特に
ヨーロッパやアジアの)レストランの食事や、公共交通の料金、
ホテルの宿泊代などがとても高く感じられることはないですか。

今回はその理由を少し考えてみたいと思います(深く考えて
ゆきますと結構怖いですよ〜)。

1995年の円/ドルレートは、年間平均で1ドル=約96円でした。

仮にこの年、皆さんが200万円の車を買ったとしましょう、
日本では200万円で買える車、当時の円/ドルレートは1ドル=96円
ですので、米国で買えば20,800ドル(注)ほどで買えたこと
になります。

(注):仮にこの車が世界中どこへ行っても同じ価値を持つと
考えた場合です。

さて、その後です。

ご存知のように日本ではその後、本格的なデフレ時代に
突入することになります。

以下は、各年の消費者物価指数の変動率です。

1996年 +0.1%
1997年 +1.8%
1998年 +0.6%
1999年 -0.3%
2000年 -0.7%
2001年 -0.7%
2002年 -0.9%
2003年 -0.3%
2004年 -0.2%
2005年 +0.1%
2006年 +0.1%

(内閣府 国民生活白書等より)
上記に基づいて計算すると、1995年を100とすれば2006年の消費者物価
は100.46となります。

仮に上記の車に当てはめてみますと、1995年に200万円だった車は、
2006年時点でもほとんど価格は変わらず、約201万円(注)で買える
ということになります。

(注)これもあくまで考え方を簡単にするための事例であり、車が
全く機能的な向上もなく、消費者物価に完全に連動して価格設定
されると仮定しております。

一方でこの間、米国の消費者物価はどのように動いたでしょうか。

以下は、米国の消費者物価指数の変動率です。

1996年 +2.9%
1997年 +2.3%
1998年 +1.5%
1999年 +2.2%
2000年 +3.4%
2001年 +2.8%
2002年 +1.6%
2003年 +2.3%
2004年 +2.7%
2005年 +3.4%
2006年 +3.2%

(内閣府 国民生活白書等より)

この間の物価上昇率の合計は32.2%と計算できるので、
1995年時点で20,800ドルで売っていた車は

20,800ドル×132.2%=27,498ドル(注)
(注)この車の価格が米国の消費者物価の上昇率に一致すると仮定しています。

に上昇することになります。

ところで皆さんは「購買力平価説」という言葉をお聞きになった
ことはございますか。

これは為替の決まり方を説明する一つの考え方で、『世界中に普遍的
に存在する財(商品)が、各国の通貨で同じ価値になるよう、為替は
変動する』大まかに言ってしまえば、このような考え方です。

この「購買力平価説」に基づきますと、上記の車は2006年時点でも、
日米で同じ価値になるように、為替はスライドしていなくてはならない
ことになります。

先ほどの計算どおり、2006年時点の日本の車は201万円、
これに対し米国では32%ほどインフレが進行し、27,498ドルになって
います。

数字で表しますと

201万円=27,498ドル

とこのような式が成り立つはずで、この場合の円/ドルレートは
1ドル=73.1円 と計算できます・・・

皆さんは以上の結果をご覧になって、何か変だと思われませんか?

実際の2006年円/ドルレートは期中平均で約116円でしたので、
上記の73.1円とは大きく乖離していることになりますよね。

さて、これは一体何を意味しているのでしょうか。

購買力平価説に基づきますと、高インフレ国の通貨は安くなり、
デフレ国(もしくは低インフレ国)の通貨は高くならなければ
なりません。

円とドルに当てはめますと、高インフレ国の米国のドル
が安くなり、低インフレ国の日本の円は高くなるはずで、その適正
レートは先ほどの車の例で見たように、1ドル=73.1円という
ことになります。

にも関わらず、実際には1ドル=116円だった・・・

これはどういうことかと言いますと、日本はデフレですので、本来は
円高になる必要があります、1995年時点では1ドル=95円でしたから、
そこから73.1円に向かって円は高くなるはずなのですが、高くならない
ばかりか逆に安くなってしまった・・・

これは、実は単に円安が進んでというような甘いお話ではなく、
両国のインフレ率の違いから、本来は円高に進むべきところが、
逆に円安になってしまった、このような特異なことが徐々に進行
してしまったという深刻なお話なのです。

これをもう少しわかり易く分解しますと

1.表面的には、1ドル=96円→1ドル=116円に向かっての円安。
これは率にして約21%の円安。
2.ところが本来は1ドル=73.1円であるべきはず。
3.従って、実質的には73.1円→116円、約59%も円安が進んでいることになる。

となります、見かけ上の円安率は21%ですが、実質的には59%以上
も円安が進んでいることを意味しています。

最近では、マグロや穀物など需給がタイトな一次産品の購買現場で、
よく日本の商社が買い負けているというお話しを聞きますが、たかが
21%ほどの円安では、そこまで深刻な影響は出ないのではないでしょうか、
これも海外のショッピングと根っこは同じ、表面的な円安に止まらず、
実質的には、さらに大きく円安が進行していることが事態を深刻に
しているといえるのではないでしょうか。

ではなぜ本来高くなるべき円が、これほどまで買い叩かれてしまう
のでしょうか・・・

このお話しをしますと、少し憂鬱になってしまうのですが、やはり
為替は国力を反映するということに行き着いてしまうように思います。

日本の将来は決して暗くはないと思いますが、それでも成長途上の
生きのいい若い国々、あるいは地下を掘ればいくらでも資源が埋
まっている国々、移民がこれからどんどん入ってくる国々・・・
このような国と我が国を比べると、どう考えても国としての勢いが
違うのは明白です。

しかも我が国では、今あるリソースを有効に活用し、国としての
成長性を高めてゆこうとする政策が、残念ながら徐々に後退しつつ
あるようにみえます。

10年前に比べ、私達日本人が特に貧しくなったというわけでは
なさそうですが、少なくとも欧米、新興国など海外の国々のほうが
より豊かになり、結果として日本の相対的な豊かさは薄れた、これが
今の日本の状態ではないでしょうか。

今までの延長線上に我が国の将来があるとするならば、それは決して
明るいものではない、そのことを既に為替レートは語り始めている
のかもしれません。



では 今回はこのへんで。





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