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米ドルの懸念
皆さん、こんにちは。

以前為替について書かせていただいたことがありますが、そのおり
お話ししたように、現在の円の価値は実質実効ベースで
みると、1973年以来の円安水準になっています。

このようなお話しをしますと、皆さんは円は弱そうだから
これからは米ドルでも資産を持っておこう、このようにお考え
かもしれません、が、ここ5年という期間で見ますと、米ドルも
円同様に弱い通貨の仲間に入ってしまっています。

以下は2002年から今年2007年に至る5年間の、円対外国通貨の
レート変動率です(資料:日経夕刊2007年9月29日)。

・米ドル 1年(-1.1%)、3年(+5.6%)、5年(-1.6%)
・ユーロ 1年(+5.4%)、3年(+19.6%)、5年(+36.5%)
・英ポンド 1年(+4.6%)、3年(+18.4%)、5年(+28.0%)
・豪ドル 1年(+6.0%)、3年(+23.1%)、5年(+45.6%)
・スイスフラン 1年(+1.1%)、3年(+12.3%)、5年(+22.2%)
・香港ドル 1年(-1.3%)、3年(+5.8%)、5年(-1.5%)
・シンガポールドル 1年(+2.2%)、3年(+18.8%)、5年(+12.9%)
・韓国ウォン 1年(+1.4%)、3年(+29.5%)、5年(+25.7%)

見方の例:例えば米ドルは円にに対し、直近の1年間で1.1%弱くなり、
同様に直近3年間では5.6%強くなった、このように見て下さい。

上記をご覧頂いてお解りのように、少なくともここ5年間だけを
みますと、米ドルも円とほぼ同じペースで、他の通貨に対して
徐々に弱くなってきているといえます。

いまここで私達日本人が考えなくてはならないのは、この米ドル安が
一時的なものなのか、それとも長期的な米国の地位低下を予見して
いるものなのかという点ではないでしょうか。

循環的かつ一時的な米ドル安だとすれば、今後米ドルの資産ウエイトを
高めて差し支えないでしょうし、場合によっては米ドルを底値で
買って収益のチャンスを積極的に狙うということさえ可能になります、
反対にこのドル安は米国そのもののプレゼンスの低下を先取りして
いるのだとすれば、これ以上米ドル資産を増やすことは危険です。

さて、皆さんはどちらだとお思いになりますか?

結論から申し上げますと、私は後者の可能性が高いのではないかと
思っています。

歴史を紐解いてみますと、かつて世界の覇権を得た国で、その
地位を長期にわたって維持し続けた国は見当たりません。

例えば16世紀のスペイン、その冒険的気質と海軍力で世界の
覇権を握りましたが、世紀半ばにはトルコ、後半に英国にそれぞれ
海の戦で負け、その全盛期はわずか30年程度に過ぎず、その後は
欧州に次々起こった新興国のなかに埋没しつつ今に至っています。

続いて欧州で覇権を握ったのはオランダです、17世紀初頭、インド
からアジアに向かって膨張し、一時は非常に強い海上帝国を
築きましたが、17世紀後半に英国との間で3度の戦を起こし、その結果
国力の衰退を招きました。

その英国をみても、19世紀の後半産業革命によって蓄積した国力を
背景に、一時は世界の覇権を握るかに見えましたが、第二次世界大戦後、
急速に力をつけた米国にその地位を潤Eることになります。

このように見てまいりますと、どうやら一国の国としての力という
ものには一種の賞味期限のようなものがあり、体制が固まって一時は
国力がピークに達するが、せいぜい60年も経過すれば、やがて社会
そのものが老朽化し、やがては競争力を失う、そういう宿命にある
のではないかと思えてなりません・・・

翻って現在の米国をみるとどうでしょうか、第二次世界大戦以降は
当時のソ連を除き、覇権を争うような国は他になく、そのソ連で
すら、もうずっと前に姿を消しました・・・米国はかれこれもう
60年以上も世界の覇権を握り続けているわけですが、そろそろ国力
のピークを超えたことを示すデータもいくつか出てきています。

例えば経常収支の赤字の拡大、1980台は対GDP比で3%台にすぎません
でしたが、2006年には7%台に達しています。どこまで基軸通貨としての
信任を維持できるのでしょうか・・あるいは経済成長率をみても、
米国の成長率はあきらかにアジアや中国、中東などの新興国に凌駕
され続けています。

昔からアラブ人は機を見るに敏というところがありましたが、例えば
中東カタールの投資庁(カタール政府が運営する政府系ファンド)は、
すでに総資産に占める米ドル建て資産のウエイトを、40%に大幅圧縮し
ました、あるいは同じくクウェートは今年5月、すでにドルペッグ制
を停止、主要通貨のバスケット制への移行をすませるなど、徐々に
米ドルから距離を置く動きが顕在化しつつあります。

米国は1980年台、一時著しい経済的な停滞に見舞われた後、急速に
経済的な復調を果たしました・・あるいは現在の米国の状況も
一時的なもので、また粘り腰を発揮しないとも限りません。

しかし少なくとも用心するに越したことはありません、上記の
ようなことを頭の片隅において、今後の資産配分をお考えになることは、
決して無駄ではないように思います。



では 今回はこのへんで。





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