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検証、この一年
皆さん、こんにちは。

資産運用の要諦は、分散投資にあるとよくいわれますね。

これはどういうことかといいますと、例えば株に対して債券、
あるいは株に対してコモディティといったように、お互いに
できるだけ無関係に値動きする(あるいはできれば、反対側に
値動きしやすい)傾向にある、複数の資産に分散投資すること
により、資産全体の価格変動(リスク)を抑えながら、リターンは
維持できるということです。

例えばAという金融商品があり、昨年一年の月間リターンが

・+1.5%(1月)
・+0.5%(2月)
・+1.5%(3月)
・+0.5%(4月)
・+1.5%(5月)
・+0.5%(6月)
・+1.5%(7月)
・+0.5%(8月)
・+1.5%(9月)
・+0.5%(10月)
・+1.5%(11月)
・+0.5%(12月)

だった場合、この商品Aの年間運用実績は下記のようになります。

□年間リターン 12.67%
□年率換算リスク 1.93%

(補足)
上記でいうリスクとは価格変動の激しさを示す数値です、この値が大きい
ほど価格変動は激しくなります、一般に(よほどギャンブル体質の方で
ない限り)人はこのリスクを避けようとします、個々の金融商品をみると、
高いリターンを得られる商品は、価格変動(リスク)が高くなり、低い
リターンしか得られない商品は、価格変動(リスク)も低いという関係
が成り立ちます。(補足終わり)


一方で同様に、下記のような金融商品Bがあったとしましょう。

・+0.5%(1月)
・+1.5%(2月)
・+0.5%(3月)
・+1.5%(4月)
・+0.5%(5月)
・+1.5%(6月)
・+0.5%(7月)
・+1.5%(8月)
・+0.5%(9月)
・+1.5%(10月)
・+0.5%(11月)
・+1.5%(12月)

この商品の年間実績を計算してみますと

□年間リターン 12.67%
□年率換算リスク 1.93%

と商品Aと全く同じであることが解ります。


AとBの値動きをよく見て下さい、Aは1%を基準にして

+0.5%、-0.5%、+0.5%、-0.5%・・・

一方でBは1%を基準に

-0.5%、+0.5%、-0.5%、+0.5%・・・


というように、ちょうど逆の方向にリターンが振れていることが
お解りいただけると思います、この状態を「逆相関」と呼ぶのですが、
この場合AとBをちょうど50%ずつの割合で保有しますと、資産全体の
リスク(振れ)はゼロ、一方でリターンはもともとの商品Aや
Bと全く同じく+12.67%となります。

ためしに商品A50%、商品B50%のポートフォリオの月別リターン
を計算してみますと。

・(0.5%+1.5%)÷2=1.0%(1月)
・(1.5%+0.5%)÷2=1.0%(2月)
・(0.5%+1.5%)÷2=1.0%(3月)
・(1.5%+0.5%)÷2=1.0%(4月)
・(0.5%+1.5%)÷2=1.0%(5月)
・(1.5%+0.5%)÷2=1.0%(6月)
・(0.5%+1.5%)÷2=1.0%(7月)
・(1.5%+0.5%)÷2=1.0%(8月)
・(0.5%+1.5%)÷2=1.0%(9月)
・(1.5%+0.5%)÷2=1.0%(10月)
・(0.5%+1.5%)÷2=1.0%(11月)
・(1.5%+0.5%)÷2=1.0%(12月)


となり、全ての月でコンスタントに1%の利益を上げること
になります、言い換えればこれが全く「振れ」のない状態、
さらに申し上げれば、これが「リスクゼロ」の状態ということに
なります。

仮に皆さんの資産が、このような「リスクゼロ」状態にできたとすれば
どうでしょうか・・・「リスクゼロ」というのは、資産価格が毎月一定率
のピッチで常に増えてゆく状態です・・・恐らくほとんどの方にとって、
これは理想的な状態に違いありません。

もちろん自然界には、このような「逆相関」の商品の組み合わせは存在
しませんので、皆さんの資産のリスクをゼロにすることは不可能です。

それでも、お互い異なる方向に動きやすい、複数の資産に分散投資する
ことにより、リターンを維持しながらリスクを抑制することは出来ます。

このあたりことは、弊社サイト『ミドルリスク・ハイリターンの
ポートフォリオを作る』に、もう少し詳しく書いていますので、興味
のある方はご参照下さい。
https://www.ginzafp.co.jp/info/060310.html

さてここまでが一般論です。

ではこのような一般論が、例えばここ一年間のような(いわば)
市場に対して大きなストレスがかかった、一種の特殊な状態で、
果たして機能しえたのか、それとも意味がなかったのか、その点を少し
検証してみたいと思います。

例えば株とコモディティの組み合わせ。

これら2資産は相関性が低く、ポートフォリオのリスク抑制に有効だと
いわれてきましたが、果たしてサブプライムショックを挟んだこの
12ヶ月間をみるとどうだったのでしょうか。

まず株の代表選手として、ニューヨーク・ダウ平均を見てみましょう。

昨年6月以降の月別リターンは

・-1.6%(2007年6月)
・-1.5%(7月)
・+1.1%(8月)
・+4.0%(9月)
・+0.2%(10月)
・-4.0%(11月)
・-0.8%(12月)
・-4.6%(2008年1月)
・-3.0%(2月)
・-0.0%(3月)
・+4.5%(4月)
・-1.4%(5月)

となり、この間の実績は

□年間リターン -5.7%
□年率換算リスク 8.82%

となりました(もちろんドル建てですよ)。


では同様に、コモディティの代表的指数であるCRB指数の、直近12ヶ月
を見てみますと。

・+1.3%(2007年6月)
・+2.7%(7月)
・-4.7%(8月)
・+8.1%(9月)
・+5.2%(10月)
・-3.2%(11月)
・+5.6%(12月)
・+3.0%(2008年1月)
・+11.7%(2月)
・-6.3%(3月)
・+5.8%(4月)
・+3.2%(5月)
□年間リターン +33.7%
□年率換算リスク 23.57%

と計算できました、さらにこの2資産の相関係数を計算してみますと、
結果は+0.14となりました。


相関係数は-1.0〜+1.0の間の値を取るのですが、-1.0に近づくほど
逆相関の状態に近づきます、ダウ平均とCRBの直近12ヶ月は上記の
ように+0.14ですが、これは十分にリスク抑制効果があると言って
よいでしょう。

ちなみにダウとCRBを、50%ずつ保有した場合のリスク/リターンは

□年間リターン +14.0%
□年率換算リスク 13.13%


となりました、株(ダウ平均)を100%保有した場合に比べ、リスク
は8.82%→13.13%とやや高まりましたが、リターンは-5.7%→+14.0%
と大幅に改善する結果になりました。

少し長くなって恐縮ですが、最後に株や債券などとは異なった値動き
をするといわれてきた、トレンド・フォロー型のヘッジファンドを、
上記のポートフォリオに加えるとどうなったか、検証してみましょう。

ヘッジファンドにはさまざまな運用戦略があり、なかなか一言では
語りにくいのですが、最も日本人に馴染み深いM社のADP
(運用プログラム名です)を見てみますと、直近12ヶ月の実績は

・+4.6%(2007年6月)
・-3.9%(7月)
・-3.5%(8月)
・+5.6%(9月)
・+9.0%(10月)
・+4.3%(11月)
・-4.2%(12月)
・+6.1%(2008年1月)
・+2.8%(2月)
・+4.5%(3月)
・+1.0%(4月)
・+3.2%(5月)

□年間リターン +32.5%
□年率換算リスク 18.61%

となりました、さらにADPとダウ平均との相関性を計算すると-0.106、
ADPとCRB指数の相関性は+0.107となりました、いずれも比較的
低相関だったことがわかります。



続いてダウ平均(株)、CRB指数(コモディティ)、ADP(ヘッジファンド)
それぞれ1/3ずつ均等に組み入れたポートフォリオの、直近12ヶ月実績
を確認しておきましょう。

・+1.4%(2007年6月)
・-0.9%(7月)
・-2.4%(8月)
・+5.9%(9月)
・+4.8%(10月)
・-1.0%(11月)
・-0.2%(12月)
・+1.5%(2008年1月)
・+3.8%(2月)
・-0.6%(3月)
・+3.8%(4月)
・+1.6%(5月)

□年間リターン +18.2%
□年率換算リスク 13.11%
となりました、さきほどのダウとCRBを50%ずつ保有した場合の
リスク/リターンが

□年間リターン +14.0%
□年率換算リスク 13.13%
でしたので、リスクを維持しながら、さらにリターンを4%ほど
向上させることができたことになります。



以上リスク/リターンの基本的なご説明から、ここ1年の検証まで、
長々とご説明して参りましたが、結論としては、ここ一年市場は大きな
ストレスにさらされてきたものの、分散投資の有効性は確認できた、
このようにいえるのではないでしょうか。

では、今回はこのへんで。
(2008年6月17日)




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