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明確になった中国の戦略
皆さん、こんにちは。

11/9夜、中国政府は大規模な財政出動プランを発表しました、
2010年までに総投資額ベースで4兆元(約57兆円)の景気刺激策を
行うというものです。

内容としては

・安価な住宅の建設
・鉄道、道路、空港などのインフラ建設
・環境対策の強化

など十項目が挙げられています。

私はこの経済対策にいろいろな意味が込められているように思います。

まずは額面どおり景気浮揚策としての意味。

今回発表された対策の規模は57兆円、しかもこれは日本のような
事業規模レベルのお話しではなく、実際に支出されるいわば真水(まみず)
部分の額です。

4兆元という額がどれ程大きいかといいますと、これは中国の2007年
のGDPの約16%に相当する金額になりますし、また別の言い方をすれば、
「中国の2007年の固定資産投資(設備投資と建設投資の合計)は13.7兆元。
2年間で4.7兆元の公共投資は極めて大きい」(日経11月11日記事より)
ということになるでしょう。

私などはまずこの対策の規模に驚いてしまいました、先進国では
良くも悪くも議会の承認を要しますので、なかなかこれだけ迅速かつ
大規模な景気対策を打ち出すのは難しいでしょう。

一般に中国は年率8%程度以上の経済成長が必要といわれていますが、
直近7-9月期の経済成長率は9.0%に鈍化、この対策で2008年および2009年
の経済成長率を0.5%程度押し上げる効果が見込まれますが、
8%成長達成のために4兆元の投資は不可欠だと考えたのでしょう。

この対策が2008年・2009年の二年間に集中的に投じられるのも、なかなか
興味深いですね、おそらく世界の景気後退による輸出減は2009年
まで続くとみて、当面二年間は中国国内の内需喚起により経済成長を
確保するしかないと見切ったのでしょう、別な言い方をすれば、この
二年を乗り越えれば、再び欧米への輸出が回復し、中国経済は自立的な
回復軌道にのるとみているのでしょう。

以上が純粋経済面から見た今回の経済対策の意義です。

私は常々中国の近年の外交はとても巧みでしたたかだと感じていますが、
今回の発表にも外交上の意図を感じ取ることができます。

欧米の金融原理主義の破綻、そして続いて起こりつつある景気後退に
もはや十分な需要を創出できない欧米・・・このようななか行われる
金融サミットに先立って、世界経済のアンカーとして自国の潜在力を
アピールできるということの意義の大きさ・・・

G7体制に続き構築されるであろう新しい枠組みで、中国が主要国の一角
を占めるための布石であることは明確です。

もっと大げさに言えば、中国は米国に代わるスーパーパワーを
意識し始めているのかもしれません・・・米国の対極に
ある規制経済主義の大国として。

では、今回はこのへんで。
(2008年11月11日)




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