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商品持ち高規制とその影響
みなさんこんにちは。

8月19日、米国の商品先物取引委員会(CFTC)が
「投資ファンドによる国際商品取引の制限」に着手した
との報道がありました。

以下は8月20日付の日経記事から抜粋したものです。

『CFTCはドイツ銀行系の運用会社など2社について農産物の買い持ち高
に上限を設けると発表。規制対象は原油など広範囲にわたる公算が大きく、
短期的には国際商品相場の波乱要因になりそうだ。(中略)政府は
これまで、持ち高制限の発動基準や導入時期を明示しておらず、強制的
な規制に踏み切るか疑問視する声もあった。それだけにCFTCの発表で
相場が大きく下げる場面もあった。』

市場ではほとんど話題になりませんでしたし、この報道を受けても
商品先物市場はあまり動揺していません、が、私はいくつかの点で
今後のCFTCの動きに注目しておいたほうがよいと思っています。

まずマネージド・フューチャーズに与える影響です。

マネージド・フューチャーズは、すでにCFTCによる持ち高の
規制を受けており、今回の発表によって新たな制限を受けることは
ありません、ただ10月に発表される見通しの包括対策のなかで、
新たにマネージド・フューチャーズに対する規制が強化される
ようなことがあれば、何らかの対応が迫られる場合もあるでしょう。

ただしこれは以前にも申し上げましたが、マネージド・フューチャーズ
のように売りと買いを交差させるタイプのプレーヤーは、相場には
中立要因であるばかりではなく、市場の価格変動を抑制する役割
も担っています。

今回の発表をみますと、むしろCFTCの関心は買い持ち専門の
プレーヤーに移っているようにもみえますので、私は
マネージド・フューチャーズを狙い撃つ、強い制限の導入の
可能性は小さいとみております。

一方で例えばETFやインデックス・ファンドのように買い持ち専門の
プレーヤーが増えてまいりますと、相場は必ず上昇しますので、
当局としては何らかの対策を打たざるをえないでしょう。

しかも昨年の金融ショック以来、異常なレベルの流動性が
市場に供給され、ただでさえマネーが商品市場に流れやすい
環境にありますので、当局としては先手をうってその流れを
止めておく必要があるはずです。

10月頃発表されるといわれる包括策に、どの程度まで踏み込んだ
内容が盛り込まれるのか、その点は明確に伝わってきており
ませんが、今回発表された上記2社に対する持ち高規制から
推測し、買い持ち型のプレーヤーに対する規制が中心となる
可能性が高いのではないでしょうか。

では仮に、買い持ち型ファンドに関する規制が導入されたとして、
市場はどのような影響を受けるのでしょうか。

まずETFや商品インデックス・ファンドは、資産構成の
組み換えを迫られるかもしれません、冒頭の日経記事によりますと、
今回CFTCが導入した規制により、上記2社は『小麦先物の
持ち高を4割圧縮する必要があるとみられる』とのことですが、
このように特定の商品について、組み入れ率の抑制を求められる
可能性は十分あるでしょう。

具体的にいいますと、例えばPower Shares DB Agricultureという
ETFのポートフォリオは、現在

「小麦25%、大豆25%、トウモロコシ25%、砂糖25%」
となっていますが、これを
「小麦10%、大豆25%、トウモロコシ25%、砂糖25%、綿15%」

という具合に組み替えるというイメージです(あくまでイメージ
ですよ)。

また商品インデックス・ファンドの場合、このような組み換え
に加えて募集額の上限を設定するかもしれません。

当然このような持ち高制限を受けたコモディティのなかには、
一時的に価格が下落するものもでるでしょう。

では規制により、過剰な投機マネーが退出した後、
市場はどのように変貌してゆくのでしょうか・・・

残るのは、既に規制下にある買いと売りを組み合わせるタイプ
のファンド、持ち高制限を受けたETFやインデックス・ファンド、
あとは結果的に主人公となった実需家たち。

恐らく(当局の思惑通り)相場のボラティリティは抑制
され、実需が牽引する形で相場は徐々に上昇を続けるのでは
ないでしょうか、よく考えてみると実需にとっても、市場にとっても
決して悪い世界ではないように私は思います。

いずれにしても、今後しばらくはCFTCや市場の動きは
ウォッチしておいたほうがよさそうですね・・

もちろん冷静な目で。


では、今回はこのへんで。
(2009年8月26日)




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