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降りのタイミングの図り方
みなさんこんにちは。

相場が上昇トレンドから下落トレンドに転じるとき、
多くの人はなぜ市場から逃げられないのでしょうか・・・

もしこのメカニズムを解明することができれば、
私たちの今後の投資に大きく貢献することになるでしょう。

例えば日本のバブル崩壊時。

当時PERが60倍を超える解りやすい指標が点灯しましたね、
行き過ぎを示すこのような異常値が常に出るのであれば、
相場からの退出もさほど難しいことではないでしょう。

が相場の転換点で、このように異常なシグナルがいつも出るとは
限らず、その場合どうしても後手を踏んでしまいがちになります。

ではなぜ異常値はでないのでしょうか・・・

私はそのヒントは、相場の形成の仕組みにあると
思います。

いつも申しあげるように、人間の心理と実体経済は、
お互い共鳴し合って一方向に動く特性を持っていると私は
考えています。

経済学の世界で、この問題が研究テーマになったという
お話しを、私は聞いたことがありません。

おそらくこのように経済のファンダメンタルズが、人間の心理の影響
を受けるということになりますと、経済学そものが学問として成立
しづらくなるといった事情があるからではないでしょうか。

このような理由で、実体経済と人間の心理の「共鳴現象」は、
軽視され続けてきたのではないかと私は思っています。

例えば経済学の需要と供給の理論に基づくなら、

原油の価格が上昇すれば、人は原油を売り
原油の価格が下落すれば、人は原油を買う

こうなるなずでしょう、こうして原油の価格は新しい均衡点を
みつけることになるわけです。

ところが実際の市場で起きていることは、むしろ逆で

原油の価格が上昇すれば、人は原油を買い
原油の価格が下落すると、人は原油を売る

人はこのような投資行動にでる場合が多いわけです、その結果
原油価格は均衡点を見つけられず、一方向かつ無制限に動き続ける
ことになります。

このように一方向の相場が形成されるますと、やがて
そのこと自体が実体経済に影響を与え始めることになります。

例えば相場の上昇は多くの市場参加者に利益をもたらし、
それが波及的に経済活動全体を活発化させるといった
ようにです。

その結果個人消費は拡大し、企業業績も連鎖的に好転、
原油の需要は増え、高い水準にある現在の原油価格は正当化
されることになります。

これが人間の心理が実態経済に影響を与えるプロセス
です。

簡単に言ってしまえば

実体経済の拡大→人間の心理の好転→実体経済の拡大→・・・

このようなループが完成することになるわけです。

景気にはサイクルがありますが、景気サイクルの正体は、
実はこのループではないかと私は考えています。

多くの場合このループはバブル化するまえに断ち切られ、
実体経済の悪化と人間の心理の悪化という、負のスパイラルに
とってかわられることになります、言い換えればこれが景気後退
スパイラルといってよいでしょう。

しかし時にこのループは断ち切られることなく、異常なレバルまで
進行することがあり、これが即ちバブルの正体ではないでしょうか。

先ほど申し上げたように、常にバブルは実体経済の好転を伴います、
従ってバブルの生成過程では、改善が続く実体経済と、現在の相場
のかい離に気づくのは容易なことではありません。

例えばPER60倍と聞けば誰の目にも異常に映りますが、
実体経済の改善によって、企業業績そのものが異常に拡大し、
その結果PERが正常値を示していたとすれはどうでしょうか・・

異常な指標が点らないバブルの渦中で、果たして私たちは
株式相場で起きている異常に気付くことができるのでしょうか。
果たして株価のバブルをバブルと認識することができるので
しょうか。

これがトレンドの転換時、多くの人がそれに気づかず、
市場から逃げられない理由ではないでしょうか。

以上が正のバブルだとしたら、負のバブルもあります。

負のバブルは正のバブルの裏返しで、実体経済と人間の恐怖心が
共鳴し合い、恐怖心が実体経済をさらに悪化させるループの
ことです。

多かれ少なかれ、そして拡大サイクルであれ、下降サイクルであれ、
景気サイクルは常に上記のような「共鳴現象」によって形成されると、
私たちは考えておくべきではないでしょうか。

ではバブルの生成過程でそれと気づき、例えば株式市場から
いち早く退出する方法はあるのでしょうか。

今まで申しあげたような理由から、例えばPERなど、期間利益
によって大きくブレる指標への過信は危険だと思います。

「共鳴理論」に基づくと、人間の心理が攻撃的(あるいは楽観的)
になっているときは、すでにそれが実体経済を持ちあげていること
になるわけですから。

従って現在の景気水準を測定するのではなく、むしろ人間の心理の
楽観度を測ることの方が有益かもしれません。

思い起こせば

日本のバブル
米国のITバブル
サブプライムバブル


ことごとく人間の心理は総楽観でした。

この楽観は何らかのかたちで、すでに実体経済に織り込まれて
いるはずですから、確かに人間の心理の楽観度を測定できれば、
バブルの生成度合いを計れることになるでしょう。

ではどうやって客観的に人間の楽観度合いを測定する
ことができるのでしょうか。

例えば企業経営者に対する業況のアンケートには、経営者の心理が
ある程度反映されます、日銀短観の業況判断は四半期ごと報告され
ますので、これは一つのデータとして有効でしょう。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka1003.pdf

またより消費現場に近いところで採られるアンケートとして、
景気ウォチャー調査の「景気の先行き判断DI」も使えると
思います。こちらは毎月発表です。

http://www5.cao.go.jp/keizai3/2010/0408watcher/watcher1.pdf

このような心理的側面を捉えて集計される統計と、景気の先行指数
の組み合わせ、さらには自分自身で肌で感じる市場参加者の心理、
このようなものを総合的かつ客観的に常時みておくことにより、
市場に潜む楽観度合いをある程度計れるでしょうし、それが
市場からの退出時期を決断する一助となるのではないでしょうか。

では、今回はこのへんで。
(2010年4月27日)




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