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デフレ国の通貨は強くなるか

ここのところしばらく円高が続いていますね、
特に輸出型企業にお勤めの方には、気になるところ
ではないでしょうか。

私自身は今の円高は、日本の経済の実態からみて
進みすぎだと思うのですが、一方で購買力平価からみて
決して円高とはいえないとの考え方もあります。

なかには前回の円高局面(1995年当時の1ドル=79円)に
比べ、購買力平価からみていまはまだ20%以上も円安だという
見かたもあります。

今回は少し難解なお話しになると思いますが、
私なりにできるだけ解りやすく、この「購買欲平価からみた
円安論」についてお話ししてみたいと思います。

まず購買力平価についてご説明いたします。

例えば今から11年前の2000年、米国で20,000ドルでAという
自動車が売られており、なおかつその車Aは、同時期に日本で
200万円で売られていたとしましょうか。

購買力平価は、日本でも米国でも車Aの価格が等価になる
為替レートのことで、この場合は1ドル=100円となる
わけです(もちろん消費市場に車Aしかないという仮定に
たてばのお話しですが)。

□計算式

USD20,000=200万円

両辺を20,000で割ると

1ドル=100円

さてその後のお話しです、米国では物価が上昇し、その後
10年の間に10%インフレが進んだとしましょう、この場合自動車Aの
価格も10%上昇し、USD22,000になると考えます。

これに対し日本では逆にデフレが進行し、この10年の間に
モノの値段が10%安くなったとしましょう、この場合車Aの値段も
180万円になると考えます。

さて10年後の2010年になりました、この時点の購買力平価に
基づく為替レートはどう動くでしょうか。

この場合でも両国で買える自動車Aの価格は、
等価でなくてはなりません、従って

USD22,000=180万円

となり、両辺を22,000で割ると1ドル=81,8円と計算できる
わけです。

このよう購買力平価説に基づきますと、インフレ国の通貨(米ドル)
は安くなり、逆にデフレ国の通貨である日本円は高くなるわけで、
両国にこの傾向が続く限り、円は無限に高くなることになります。

実際の日米経済をみても、概ね上記と同様なことが起きており、
購買力平価によれば、現在の円高は決してゆき過ぎではないという
考え方になるわけです。

でも私は、この購買力のみによって為替の均衡点を見つけてゆこうと
する姿勢には、常々いささかの疑問を感じております。

その理由のまず一つは、時間軸の問題です。

確かに他の条件に変化がみられない、短期から中期でみれば、
この購買力平価説は為替の均衡点をみつけだす、一つの
有力な手段だと思うのですが、それ以上の長期の時間軸でみた場合、
私は妥当性は低いと思っています。

例えば10年以上のスパンで見た場合、購買力平価説の前提と
なるべき『富裕度』が、両国の間で大きくズレる場合があります。

これを解りやすく説明しますと以下のようになります。

先ほどの例で申し上げるなら、例えば日本で2000年に
200万円で売っていた車Aの価値は、十年後の2010年に
いったいどの程度の重みをもっているでしょうか。

確かに日本ではこの間デフレが進んでいますから、
車Aは2010年時点で180万円で売られているかもしれません、
がよく考えてみますと、この10年の間に日本人の年収や可処分所得は
減少し、同じ車Aのもつ意味が変わってしまっているはずです。

2000年当時、平均的なサラリーマン家庭でも、ごく普通に買えた
車A・・・確かに日本ではデフレが進み2010年時点では、店頭で180万円
で売られてはいるのですが、もはや普通乗用車は一般家庭にとって
ぜいたく品で、多くの家庭では軽自動車に乗り換える・・・あるいは
自動車の保有そのものを諦め、エコと称して自転車に乗る・・昨今の
車種別の自動車販売台数のデータをみますと、このような消費者の
傾向もみえてきます。

つまりやや大げさに申し上げますと、この間日本人の相対的な
貧困化が進んでおり、その結果自動車Aの価格は180万円ではく、
体感的に例えば300万円程度の意味をもっている・・このように
いえるのではないでしょうか。

仮にこの考え方が正しければどうでしょうか。

先ほど2011年の購買力平価説に基づく円ドルレートを

『USD22,000=180万円

となり、両辺を22,000で割ると1ドル=81.8円と計算できるわけです。』

と書かせて頂いたのですが、仮に日本人の
相対的な貧困化現象が起き、2011年時点の体感的な車Aの
価格が300万円に上昇していたとすればどうでしょうか。

この場合、先ほどの計算式は

USD22,000=300万円

となり両辺を22,000で割ると

1ドル=136.3円

となるわけです。もちろん上記の数字はいずれも架空の
もので、現在の適性レートが1ドル=136.3円だといって
いるわけではありません。

それでも私は購買力平価から機械的に適性レートを求めようと
する姿勢はあまりに表層的で、先ほどから申し上げているように、
そこに何らかの『富裕度による補正』のような作業が必要では
ないかと思うわけです。

仮にこのような補正を行わなければ、経済成長率の高い
新興国の通貨は、常に安くなり続けなければならず、
これは実体とかけ離れているといわざるをえません。

その点でも購買力平価説だけで、為替な適性レートを見つけ
ようとするアプローチに、何らかの大きな欠陥があると私は
思うわけです。

上記のような観点で、現在の円ドルレートが妥当な水準だという
意見に私は反対ですし、本来あるべきレートは、かなり円安
の水準にあるのではないかと思うわけです。




では、今回はこのへんで。

(2011年9月14日)




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