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バンクローン・ファンドについて考える

みなさんこんにちは。

ここのところ不思議とバンクローン・ファンドに
ついて意見を求められることが多くなりました。

もしかしたら、どこかの証券会社が推奨している
のかもしれませんね。

今回はこのバンクローン・ファンドについて
少し考えてみたいと思います。

バンクローン・ファンドは文字通り、バンクローンを
投資対象にしたファンドです。

ではそのバンクローンとはいったい何なのでしょうか、
まずはそこからお話しを始めたいと思います。

バンクローンは、銀行が一般の企業に対して
貸しつける融資(ローン)のことですが、なかでも
格付けBB格以下の、投資不適格とされる企業向けの
ローンを指します。

BB格以下の低格付け企業が発行する社債を、
ジャンク債などと呼びますので、それら企業向けの
ローンは、バンクローンではなく「ジャンクローン」
と呼んでいいかもしれません。

日本ではこのようなバンクローンを売買する市場は
ありませんが、米国では銀行やファンド間で活発に売買されており、
ちゃんとした市場があるようです、さすが米国・・・

従って市場参加者が考える、適正な価格というものが
形成され、一定の流動性があるわけです。

・一定の流動性
・低格付けローンだからこそ得られる高リターン
・ローンには担保が設定されているので安全性が高い
・債券と違って変動金利なので、金利上昇時には
 高いリターンが期待できる

販売会社のウリはこんなところでは
ないかと思います。

確かにそのような面もありますが、
この説明を鵜呑みにしてはいけません。

まずリスクから考えてゆきましょう。

バンクローンの最大のリスクは、いうまでもなく借主の
経営破たんで、この場合バンクローンは無価値になるか、
そうでなくても著しい価値の下落を覚悟しなくてはありません。

ただしこのような低格付け企業に、無担保で融資する銀行
はありません、バンクローンには一般に担保が
設定されており、万一の場合に一定額の資金を回収する
ことは可能です。

逆にいえば貸出先企業が破たんした場合、バンクローンの
保有者は、一定の損失を被ることになるわけで、これが
最大のリスクといってよいでしょう。

日本で市販されているバンクローン・ファンドは5銘柄
ほどあるようですが、それらが保有するバンクローンは、
借主の格付けの平均値がB格程度といってよいでしょう。

BBB以上が投資適格で、BBBの下がBB、その一つ下がBです。

つまり簡単に言ってしまえば「かなりヤバイ会社」への
融資ということになります、ご参考までにB格企業の過去の
破たん確率は、S&P社の場合おおざっぱに5%前後(注)です。

注)ある企業が単年でデフォルトする確率、1983-2001年資料

これはどういうことかと言いますと、仮にある
バンクローン・ファンドが500銘柄のバンクローンをもって
いたとすれば、毎年25銘柄は(担保がなければ)無価値になる
ということです。

仮に毎年5%の企業が破たんし、担保の売却によって回収
できないお金が40%生じたとしますと、これだけで2%の損失
が生じるわけです。

5%×40%=2%

一方で各バンクローン・ファンドの運用レポートなどを
みますと、彼らが保有するバンクローンの平均的な
利率は5%程度とあります。

B格企業への融資にしては、利率が小さいように思いますが、
まあ優先担保権を設定しているので、きっとそのぶん利率は
低いのでしょう。

ファンドの収益5%のうち2%相当分が、貸出先の破たんに
よって毎年消失するわけで、ここまでで既に期待収益率は3%
程度に下がるといってよいでしょう、もちろんこれは
平均的な年という意味で、企業の倒産件数が増えますと、
この数字は下がりますし、逆に減りますと数字は改善いたします。

注意点の二つ目は、円に対してヘッジを行う場合の
コストです、日本で市販されているバンクローン・ファンドは、
一般に円に対してヘッジをかけるクラスを設定している
ようですが、この場合為替のヘッジにはコストがかかり、
そのコストは両国の金利差相当額です。

現在日米の金利差は縮小傾向にありますが、
それでも2年債の利回り差は0.6%ほどあります、
つまり円ヘッジクラスの場合、さきほどの3%から
さらにこの0.6%ほどを差し引く必要があるわけで、
期待収益率は2.4%程度まで下がると考えておくべき
でしょう。

3%-0.6%=2.4%

さらに手数料を忘れてはなりません、
信託報酬として、このテのファンドは毎年1.5%程度
控除いたしますので、投資家の期待収益率はさらに減り、
年あたり0.9%程度になると考えておくべきでしょう。

2.4%-1.5%=0.9%

もちろん購入時には別途購入手数料が発生いたします、
一般的な初期手数料は2.5%程度に設定されているようです、
投資家がこの2.5%を回収するためには、平均で3年程度
このファンドを保有する必要があると言ってよいでしょう。

2.5%÷0.9%≒2.7年

高い金利を追い求めることを、イールド・ハンティングなど
と言いますが、イールド・ハンティングには、いつの
時代も高いリスクが伴います、そのリスクの対価としては、
上記の数字はややさびしのではないでしょうか、
その理由として以下2点を挙げさせて頂きます。

一つ目は、現状における投資不適格企業へのローンの金利が
低すぎるという点です、上記でジャンクローンの平均利率5%と
申しましたが、5%といえばリーマン・ショック前の、
米国10年債利回りと同等です。

低金利の浸透によって行き場を失ったマネーが、
過剰にジャンクローンを買っているようにおもいます、
つまりリスクに見合ったリターンが得られていない可能性が
あるのではないでしょうか。

二つ目は手数料の高さです、期待収益率が2.4%の
ファンドに対し、年間1.5%も信託報酬を支払えば、
投資家の取り分はいったいいくらになるのでしょうか・・・

もしこの種のファンドに投資されるなら、
証券会社との付き合い程度と、割り切っていただけると
よいでしょう。

 

では今回はこのへんで。

(2015年3月13日)




 




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