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格差について深く考えてみる

みなさんこんにちは。

僕はまだ読んでいませんが、日本でも話題になった
『21世紀の資本(トマ・ピケティ著)』には、
以下のようなことが書かれているそうですね。

『資本の収益率(r)は、実体経済の成長率(g)を上回り、
それが格差の要因だ』

注)ここでいう「資本の収益率」とは、株や債券などに
  投資して得られる収益率とのことです。

これがもし正しければ、株や債券などの保有者は、
それらを保有していない人に比べ、富裕化する速度が速く、
両者の経済的な格差は時間の経過とともに広がってゆく
ことになります。

おそらく『21世紀の資本』の核心は、
このあたりにあるのではないかと推測する
わけです(間違っていたらすみません、なにぶん
読んでないもので・・・)。

以下はこの推測が正しいと仮定して、お話しを
進めさせてください。

まず

『資本の収益率(r)は、実体経済の成長率(g)を上回り、
それが格差の要因だ』

という考え方に、僕などは疑問をもってしまいます。

いかにもヨーロッパ人が考えそうなことだと思いますが、
どうもピンときません。

僕は格差の元凶は、もっと他にあるような
気がするわけです。

確かに昨今『資本の成長率』が、『実体経済の成長率』を
上回る傾向にはあるとは思うのですが・・・、私たち
一人ひとりの生活を見ると、少し違った景色がみえて
くるようにも思います。

例えば僕の場合、株やヘッジファンドなど、上記でいう
『資本』を所有していますが、決してそればかりではありません。

こうやって毎日、実体経済の中に組み込まれる形で仕事を
していますし、またその労働から得られたお金でもって、
株やファンドなどを買うこともあります。

つまり僕という一人の人間は、ピケティさんがいう
『資本』と『実体経済』の両方の世界に存在し、自らのお金と
労働力という原資を、双方のあいだを出し入れしながら、
日々なんとかがんばって生きているわけです。

僕の様な凡庸な人間以外でも多分同様で、例えばソフトバンク
の孫さんは、ソフトバンクの経営から得られたお金を、
創業初期のアリババに投じ、そこで大きな含み資産を
得ています。

ソフトバンクの経営は『実体経済』の中の出来事、
これに対しアリババ株への投資は『資本』の世界で起きた事
です。

僕が凡庸だから『資本』と『実体経済』の間を行き来して
いるのではなく、孫さんの様な非凡にして超富裕層に属する人も、
両者を「行き来している」という意味では、同様の人生を送って
いるといってよいのではないでしょうか。

つまり『資本』と『実体経済』が一人一人の人間の
なかで混在しており、従って『資本』対『実体経済』という
対立の構図は、さほど意味をなさないということです。

さらに言えば一昔前と違い、すでに『資本』と『実体経済』
の境界線自体も、不明瞭になりつつあるように思います。

例えばカイシャが行うM&A(注)とは一体何なのでしょうか。

注)企業買収

一面から見れば事業の一環でありながら、別の側面からみれば
投資の性格も持ちます。M&Aは『資本』の世界で起きていると
いえるのでしょうか、それとも『実体経済』の一部なの
でしょうか・・・

このようなことから、

富の格差は『資本と実体経済の成長率の差』に起因するのではなく、
別な要因によって起きているのではないか・・

こんなふうに考えるべきではないかと思うわけです。

ではいったい格差の元凶は何なのか。

僕は人間の欲だと思っています。

経済的に豊かになりたいという、一人一人の欲望の
集合体が実体経済を成長させ、その実体経済によって
裏付けられた紙キレ(ペーパーマネー、いいかえれば
株や債券など)の価値も連動して上昇する。

人間の欲望が「実体経済」と「資本(ペーパーマネー)」
を循環的に拡大させ、双方の世界で効率よく自己を
拡大できたものが、より大きな富を得る・・・

これが富の集中のカラクリではないでしょうか。

お金持ちになりたいという欲望、
革新的な新製品やサービスを創造したいという欲望、
ビジネスの成功によって名誉をえたいという欲望、

他の条件が同じなら、欲望が強いほど自己肥大化の
成功率は高まり、そこに自然と格差が生じることになる・・

さらに一人一人のレベルでみた格差が集まって、
社会全体の格差問題になる・・

たぶんこういうことだと僕は思います。

そして残念ながら、欲望という格差の元凶を、
自ら制御する精神性を私たちはまだもつに至っていません。

であれば強制的に欲望を抑制する手法を導入する
しかなく、つまりそれが税による富の再配分です。

欲望の制御を富裕税によって実現するのか、
それとも格差を甘受しつつ成長を維持するのか・・・

この問題に対し、私たちはこれからも
向き合い続けることになるでしょう。

 

では今回はこのへんで。

(2015年4月9日)




 




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