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日本株はどこまで下がるか

みなさんこんにちは。

(今回のメルマガはちょっと長いですが、
お時間ある方は付き合いください。)

目を疑うような相場が続いていますね。

今回のショックの特徴はいくつかあると思いますが、
その一つは株価下落の速度ではないでしょうか。

下落の速度だけに注目すれば、
リーマン・ショック時に匹敵します。

下落の深さも特徴の一つです。

リーマン・ショックに9.11テロ、
東日本大震災にチャイナ・ショック・・・

今世紀に入り何度も日本株の暴落はありましたが、
今回の下落率はリーマン・ショックの▲60%、
9.11テロの▲43%に次ぐ大きさです。

注)直近一年間の高値から底値までの下落率、
  今回は現状で約▲30%

つまり下落の速度と深さの両方で、
今回のショックはリーマン級のインパクトが
あったといえるでしょう。

では今後の日本株はどのように動くのでしょう。

もちろん株の世界は簡単に予想できるほど単純ではありません、

・感染の広がりやそれに伴う経済活動の停滞度合い
・既存の抗ウィルス薬が奏功するかどうか
・ワクチンの開発状況
・政府による財政出動の規模
・中央銀行による金融政策の効果

など複雑に影響しあいながら株価は動きますので、
たとえば月次や週次といった短期の相場を予測することなど、
できるはずもありません。

でも過去のショック発生時の株価を振り返ると、
いくつかのヒントめいたものを見つけることは、
不可能ではありません。

たとえば上記でご紹介した直近高値からの下落率です。

短期的ショックという観点でみて、
僕が経験した最大の出来事は2008年に起きたリーマン・ショックです。

あの時はホントひどかったです。

今と違って危機の発生源が金融市場そのものだっただけに深刻で、
相場が足元から崩れるんじゃなかという恐怖感を持ったものです。

では今回のショックはどうでしょう。

人の物理的な移動が抑制されるだけに、
実体経済に対する深刻な影響は免れませんが、
感染の拡大がいつまでも続くとは考えられません。

すでにアビガンなど有効な既存薬の奏功が伝えられていますし、
新しワクチンの開発も始まっています。

今後は2009年に発生した新型インフルと、
似た経過をたどるのではないでしょうか。

つまり終息はせず、ほかのウィルス性感染症と同じく、
季節性の感染症として定着してしまうイメージです。

考えてみれば日本でも毎年季節性インフルは流行し、
1000万人もの患者が出て数千人単位の死者が出ます。

注)2018年の国内インフル感染者数の推定は約1000万人、死者は約3300名、
  2019年は9月までの死者の累計が3000人以上

季節性インフルは毎年必ず流行しますが、
経済は停滞しませんし株価も下がりません。

違うのはすでに抗ウイルス薬とワクチンがあるという点だけですが、
一年もすれば新型コロナのお薬も出てくるでしょう。

では仮に、
上記のように「2009年に発生した新型インフルと似た経過をたどる」
とすればどうでしょう。

たとえばリーマン・ショック時と同程度まで株は下げるのでしょうか。

リーマン・ショック時は全く先が見通せないという「不確実性」が
市場を支配していましたが、今回は上記のような理由で「期限付き」です。

言い換えれば「期間限定の不確実性」といってもよいでしょう。

株価が最も嫌うのは、この「不確実性」です。

その点から考えるならリーマン・ショック時の▲60%より
今回は軽症ですむ可能性が高いと僕は思います。

現在の日経平均に置き換えますと、
▲60%は10,000円割れの水準ですが、
上記の理由からそこまで下げることはないと思います。

ではいったいどのあたりが底値になるのでしょう。

その水準の見当をつけるためには、
指標からのアプローチが有効だと思います。

サプライチェーンの寸断や経済活動の抑制によって、
今後しばらくは企業業績が悪化するはずです。

ですから「利益アプローチの指標」は、
あまり参考になりません。

たとえばPERです、PERは一株あたり利益に対し、
何倍の株価がついているかを表す値で、一般的に日本株の
場合は14-16倍程度が適正値といわれてきました。

ここのところの株価下落で、日本株のPERはすでに10.75(注)ほど
まで下げ割安感がみえますが、これを真に受けてはいけません。

注)2020年3月17日現在、日経平均採用銘柄の平均値

なぜなら上記PERは2020年3月期の予想業績に基づいて計算
されたものだからです、今後企業業績は下方修正される可能性が高く、
その場合PERは上昇いたします。

配当利回りも同様です、
現在の日経平均採用銘柄の配当利回りは2.9%ほどもあります。

これだけみていれば今はカイのような気もしますが、
そこも気を付けなくてはなりません。

今後予想される企業業績の悪化により、各社は配当を減らす可能性が高く、
その場合当然ながら平均配当利回りも下がります。

このように「利益アプローチ型の指標」は、
現在のような環境ではほとんどあてにならず、
参考にしてはいけません。

これに対し参考になるのはPBRのように、
「バランスシートからアプローチするタイプの指標」です。

PBRは一株当たりの純資産に対して、
何倍まで株が買われているかを示す指標です。

仮にこのPBRが1倍を切ることがあればどうでしょう。

その場合、その会社は保有する資産と負債をすべて売却し、
残余資産を株主に分配すると、株主は株価以上のおカネを
得ることができます。

つまり現在の株価は解散価値以下という、
きわめて割安な状態にあるといえるでしょう。

このPBRは、PERや配当利回りと違って、
短期的な企業業績の影響は限定的です。

なぜならば損益計算は単期に属するものですが、
バランスシート(貸借対照表)は過去からの積み上げだからです。

なので今のような混乱した状況では、バランスシート由来のPBRは、
株価の高い安いを判断する指標として有効だといえるでしょう。

さてそのPBRです。

直近3/17ではすでに1倍を切っており、
0.89倍に過ぎません。

注)東証1部全銘柄の平均値

これに対しリーマン・ショック時のPBRはどうだったでしょう、
株価が底値を付けた2008年10月時点のPBRは0.83倍でした。

注)同上

この0.83倍という数字を現在の株価に当てはめれば、
日経225ベースで15,800円という値が出てきます。

つまり仮に今回の下落が「PBRアプローチ」でリーマン・ショックと
肩を並べるなら、日経平均15,800円までありうるということです。

逆に今回のショックがリーマン・ショックよりマシだと
考えるなら「PBRアプローチ」で、すでにいいところまで
下げていることがわかります。

さらに申し上げれば、過去の事例をみるとPBRの1倍割れは
そう長くは続いていません。

このことは株価が企業の解散価値を下回る状況が、
よほど異常な事態だとうことを物語っているといえるでしょう。

ご参考までにあのリーマン・ショック時ですら、
PBRの一倍割れは半年ほどに過ぎませんでした。

 

では今回はこのへんで。

(2020年3月17日)




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