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コロナ後の格差拡大とその先にあるもの

みなさんこんにちは。

今回は少し怖い話をさせていただきます。

ここのところ貧富の差が拡大しているとよく言われます、
たとえばクレディスイスによれば、
世界の最富裕層11%が世界全体の富の80%を持っているそうです。

幸いに日本ではそれほどの格差を感じませんが、
それでも貧困層の拡大はよく耳にする話題です。

今後この格差は拡大傾向だと思いますが、
僕はコロナによって、その傾向が一層強くなるのではないかと
不安です。

たとえば工場のラインです。

人と人の人との接触を減らすため、
工場のラインではできるだけ人の配置を減らさねばならず、
そのためにはロボットの活用は有効な手段です。

物流の現場も同様で、
無人化かつ自動化し、インテリジェンスを持たせた
倉庫が急速に普及しつつあります。

事務部門でも同様のことが起きています。

AI化とネットワーク化、リモート化によって、
データの入力や計算といった人間の手作業や移動は、
徐々に必要なくなってゆくに違いありません。

つまりいま会社は、従業員をロボットやコンピュータに
置き換えつつあると言えるでしょう。

そしてそのロボットやコンピュータを造るのもまた、
ロボットやAIです。

このようにして今まで会社が支払っていた人件費の大半は、
従業員ではなくロボットやコンピュータに支払われることになるでしょう。

いままでもこのような動きはありましたが、
コロナによってこの動きが早まることは避けられないのでは
ないでしょうか。

さきほども申しましたように、ロボ化、無人化、AI化によって
深刻な影響をうけるのは、単純な労働の対価に企業から賃金を
もらっていた従業員で、この層はさらに貧困化が進むのでは
ないかと思います。

逆にロボ化、無人化、AI化によって利益を享受できるのは、
いったい誰でしょう。

一義的には労働者への賃金を支払う必要がなくなる会社では
ないでしょうか。

ロボットやコンピュータも導入の際に費用が掛かりますが、
いったん導入してしまえばおカネはさほど要りません。

たしかに次の更新時には導入費がかかりますが、
ロボットを造るのがロボットだとすれば、
規模の拡大によって量産効果を得ることができるはずです。

つまりロボットの普及によって、
ロボット自体の導入コストを下げることができるということです。

これに対して人件費のほうはどうでしょう。

人間を量産することはできませんので、
ロボットやAIと違い量産効果を得ることもできません。

これはどういうことかといいますと、
今後ロボットやAIの導入コストと人件費の差はますます広がり、
それがさらにロボ化、AI化を速めてゆくということです。

深く考えると怖くなってしまいます。

さきほど僕は逆にロボ化、無人化、AI化によって利益を享受できるのは、
『一義的には』労働者への賃金を支払う必要がなくなる会社だと
申しました。

では『一義的に』にではなく、
『最終的に』ロボ化の恩恵を受けるのはいったい誰でしょう。

いうまでもなく会社の保有者である投資家です。

冒頭で世界の富裕層11%が世界全体の富の80%を持っていると
紹介しましたが、おそらく富裕層の大半は株の所有者でもあるはずです。

なんでもアメリカでは全株式の90%を上位10%の富裕層が持っている(注)
そうですが、もし上記のように会社の所有者に、
今後さらに富が集まるとすればどうでしょう。

注)FRB資料より

世界はますます株を持つ者と持たざる者の差が広がり、
さらに貧富の差は拡大することになるでしょう。

私たちも負け組に入らないよう大局観を持たなければなりませんが、
同時にまた、格差拡大がもたらす社会の変容への備えを
おこたってはなりません。

僕にはどう考えてもこのまま格差の拡大が延々と続くとは思えません。

もし今でも一人一票を前提とした大衆による民主主義が機能しているとすれば、
いずれ揺り戻しが起こってもなんら不思議ではありません。

具体的には格差是正を目的とした政策の転換です。

仮に今の連立与党体制でそのような政策転換が無くても、
格差是正を目指す他党が「富の一極集中の被害者である国民」の支持を得て、
政権をとる可能性もあります。

その結果起きるのは法人税引き上げと所得税の累進性強化ですが、
それだけでは富裕層が貯めこんでいる資産の再配分はできません。

同時に相続税と贈与税の税率引き上げが検討され、
さらに累積している政府債務の一掃を目的とした、
富裕層向けの資産課税が加わることになるかもしれません。

荒唐無稽とお感じになるかもしれませんが、
決して可能性はゼロでは無いと僕は思います。

特に富裕層に属する方は、
以下のような流れが起きることを、
念のため想定しておいたほうがよいのではないでしょうか。

ロボ化、AI化の加速
 ↓
単純労働機会の減少、
従業員の賃金の減少と企業業績の拡大
 ↓
企業の所有者(株の保有者)へいっそうの富の集中
 ↓
世界的規模で起きる「格差是正トレンド」への転換

実態を伴わない株式という紙の資産は諸刃の剣です。

砂の上に築かれた楼閣のように、一種の危うさと不安定さを
持っているということを私たちは忘れるべきではありません。

その観点でも資産の質的分散は必要ではないでしょうか。

 

では今回はこのへんで。

(2020年6月15日)




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