■足元の半導体株について考える
みなさんこんにちは。
市場は先見性を発揮する場合もありますが、
時にその先見性が行き過ぎてバブルを作り出すこともあります。
今回のはじまりは2022年の年末でした。
オープンAI社がチャットGPTを公開し、
そこから半導体の市場は一変いたしました。
AIの需要が爆発すると見た市場は、
AIサーバー向けの高性能半導体=GPUを一手に手掛ける
エヌビディア株に注目し始めました。
そして2023年の半ばあたりからエヌビディアに代表される、
半導体株の急騰が始まりました。
続く一年間は業績拡大を先どった先見相場ともいうべき、
正常な相場だったと思います。
僕は長年株式投資をやっていますが、
大概のブームは下のような段階を踏みつつ進むように思います。
・ブームの初動期
市場の先見性が発揮される次期です。
市場は新技術による業績急拡大を予見し、
関連株の急騰が始まります。
・ブームの拡大期
多くの投資家が相場に参加することにより、
関連株のすそ野が広がると同時に、
中核をなす企業の株価はさらに上がります。
・バブルの発生期
投資のすそ野はさらに広がり、
関連株は妥当な範囲を超えて買い上げられます。
・バブルの拡大期
連想ゲームのように次々関連株が買い上げられ、
株価の水準は説明不能な水準を超えます。
・バブルの崩壊期
恐怖心が欲を上回ったところがバブルの頂点で、
そこから急速に関連株は下がります。
・売られすぎの時期
関連株はさらに下げ続け、
本来あるべき水準を下回ります。
・適正な相場が形成される次期
市場はいずれ等身大の新技術を理解し、
株価はそこにむかって正常化してゆきます、
その過程で下げ過ぎた銘柄は本来の水準に向かいます。
バブルの大きさは様々ですが、
バブルの生成と崩壊は、
例外なく上のような段階を踏んで進行するように僕は思います。
さてそのような観点で、
2022年に始まったAIブームを振り返るとどうでしょう。
まず考えたいのは、
AIという新技術が持つ社会への影響力です。
大きいものから小さいものまで、
僕はいろんな新技術を見てきましたが、
実需の観点から見るとAIはかなり大きい部類に入ると思います。
ときどきAIを産業革命や通信機の発明と肩を並べるほどの
影響があると考える人がいますが、
僕自身はそこまでのインパクトはないと思います。
それでも近年でいえば、
たとえばインターネットやスマホ程度には、
社会に影響をもたらすと思います。
つまりAIはかなりの大玉です。
次に考えておきたいのは、
「AIは上記のうちどの段階にあるか」という点です。
結論から言えば、
いまのAIは「バブルの崩壊期」から「売られすぎの時期」あたり
にあると僕は思います。
その根拠の一つはPERです。
AI半導体のリーダーであるエヌビディア株を見てみると、
予想PERベースで25倍ほどにすぎません。
S&P500の平均が20倍超なのでそれと比べると高いですが、
同社の成長性やAIの将来性から考えると、
同社株は妥当な水準以下まで売られていると思います。
あとAI半導体向けメモリ(HBM)を作るマイクロンテクノロジーという
会社がありますが、同社の予想PERも15倍ほどすぎません。
日本にAIのど真ん中企業はありませんが、
それでも関連企業というべき半導体メーカーはたくさんあります。
たとえばイビデンです。
かつて同社はインテル関連銘柄などとよく言われましたが、
最近ではインテルへの依存度が下がっていますし、
逆にAI半導体のウエイトを高めつつあります。
そのイビデンの予想PERは21倍台まで下がっています。
あまりたくさん触れられませんが、
一時エヌビディア関連株として注目されたアドバンテストも、
足元の来期予想ベースPERは26倍台です。
僕がAIを「バブルの崩壊期」から「売られすぎの時期」あたり
にあると考える、もう一つの理由は「体感」です。
体感というのはなんともあいまいな言葉ではありますが、
僕はこの「体感」を大切にしています。
市場にバブル感が漂ってくると、
経済番組だけでなく一般のニュースや大衆誌まで。
もっとバブル感が強くなると、
お昼のワイドショーなどでも関連ニュースが取り上げられる機会が
増えてきます。
そんなときはバブルで要注意だと思います。
逆に経済専門ニュースなどで、「AIから人気が離散」とか、
「半導体株への期待が遠のき」といったフレーズが頻繁に
聞こえてくると、それは「逆バブル」のサインです。
最近僕はこのフレーズをよく耳にしますので、
この点からも市場は弱気に傾いているのでしょう。
もう1点、半導体特有のサイクル(注)から見ても、
いまは底値に近付いていると僕は思います。
注)この点についてはお話が長くなるので、
またの機会にいたします。
以上3つの点から、
AI株は今「バブルの崩壊期」から「売られすぎの時期」あたり
にあると判断できると思います
ブームの中にどっぷりつかっていると、
冷静な気持ちを失いがちですが、
たまにこんな視点で考えてみるのも意味があると思います。
では今回はこのへんで。
(2025年3月28日)
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