■「AI=低PER」で安心なのか−本論
みなさんこんにちは。
先週おはなししたように、
PERは株価の適正水準を知るために大切な指標です。
一方でPERが適正値に収まっていても、
株価がバブル的水準にあることもあります。
例えば先日、日経平均株価が71,000円台に乗せましたが、
そ時点のPERは18.5倍程度です。
確かに過去の平均14-16倍程度と比べると高いですが、
それでもまだバブル的な水準とまでは言えません。
ではこの事実をもって、日経平均株価はバブルでないと言えるでしょうか?
僕はこの点については注意が必要だと思います。
先週お話ししたように、
PER/EPS/株価の間には以下のような関係があります。
EPS(一株当たりの利益)×PER=株価
注意が必要なのは、上式のEPSは今期予想ベースの値を使うという点です、
現時点では2027年3月期(注)の最終利益をベースにした「予想EPS」で計算いたします。
注)多くの日本企業は3月決算ですから
この「予想EPS」をわかりやすく言えば、
「経済や市場がいまのような感じで推移すれば、おそらく実現するであろうEPS」
と言ってもいいでしょう。
問題はこの「であろう」という部分で、
ここにバブルが入り込む余地が出てきます。
例えば半導体メモリーを作っているK社です。
足元の半導体メモリーの価格は絶好調で、たとえばK社が専門にする
NAND型フラッシュメモリーと呼ばれるメモリーの価格を見ると、
四半期ベースで対前年同期比3-4倍ほどに値上がりしています。
市場は完全に売り手市場になっており、
いってみれば提示価格は「言い値」ですし、
しかも長期契約を結べています。
今後しばらくこの状態は続きそうですし、
2027年いっぱい高値で販売できるとの見方が主流です、
つまり今期(2027年3月期)だけでなく、
翌期(2028年3月期)あたりまで高い利益率を確保できると市場はみているのです。
実際にK社の株価をみると、トヨタを抜いて日本一の時価総額を実現しながら、
予想PERは10倍程度にすぎません。
このような明るい見通しを受け、
多くのアナリストは同社株に対して強気の予想をたてており、
中には目標株価を20万円(現在の株価は10万円を超えました)に設定する
外資系金融機関もあります。
仮にK社株が20万円をつけても、
予想PERは20倍ほどにすぎません。
僕はこのような現状に少し危うさを感じています。
確かにPERからみるとK社株にバブル感はないのですが、
もしPER算出のもとになる予想EPSのほうにこっそりとバブルが
入り込んでいたとしたらどうでしょう。
その場合「PERは妥当な水準に収まっていても、株価はバブル化している」
ということがおきえます。
では現実にそのようなステルスバブルは発生しているのでしょうか?
僕は足元のAI半導体について、
いくつかのバブル的な要素が入っていると思います。
バブル要素の一つめは、
足元で「半導体サイクル」と「AIブーム」がごちゃ混ぜになっている点です。
通常の半導体サイクルは4年ほどで一つのサイクルを描くことが多いです、
前回のサイクルは2018年央のピークから2022年央のピークまででした。
続いて起きた今回のサイクルは2022年央を頂点としていますから、
通常なら2026年央、すなわち今がピークになるはずです。
株価はピークから1年ほど先に下がり始めますので、
すでに半導体株は昨年のなかばにピークをつけていても不思議ではありませんでした。
でも現実はどうでしょう。
たしかに半導体株は2025年の年初にいったん大きくさげましたが、
2025年央から急上昇中です。
おそらく通常の半導体サイクルに、
AIブームによる上昇がミックスされた結果ではないかと思います。
その結果、市場はバブルの見極めが難しくなっているのだと思いますし、
足元で「混成によるバブル」が起きているのだと思います。
「AI半導体=バブル化リスク」の二つ目は、
AIサーバー投資の行き過ぎです。
たしかにAIは途方もなく大きな市場になると思いますが、
そこに向け三角定規の一辺のように直線的に拡大することはないと思います、
きっと何度かの行き過ぎと、何度かの反動を繰り返しつつギザギザ進むでしょう。
この市場のギザギザのもとをたどれば人間の欲望と恐怖に行きつきます。
もしこのギザギザ・・・言い換えれば行き過ぎた心理の反動が顕在化するならば、
いったい何が起点になるのでしょう。
一本のチェーンを両側に引っ張ればいちばん弱い部分で切れます。
おそらく切れる箇所はハイパースケーラーのうちの一社、
たとえば財務的にもっとも脆弱なO社あたりで、
AIサーバー投資の下方修正がきっかけになると思います。
足元のAI半導体ブームの核心は、
ハイパースケーラーによるAIサーバー投資拡大への信頼感に行きつきますが、
そこが崩れるとあとはドミノ倒しです。
AIサーバー投資という半導体株ピラミッドの基盤が崩れると、
半導体そのもの、半導体製造装置、半導体の部材、半導体検査装置などなど、
関連する企業群の業績予想のベースが崩れてしまいますし、
それは関連企業の予想EPS修正に行きつくでしょう。
いまのところ確かにPERから見たAI半導体株にバブル感はありませんが、
上記の様にEPSのほうにバブルが隠れている可能性はあります。
私たちはそこに目を向けておくべきではないでしょうか。
では今回はこのへんで。
(2026年6月18日)
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