ホーム > T's資産運用コラム > 金利が上がると何が起きるか
金利が上がると何が起きるか

みなさんこんにちは。

昨日、日銀の政策決定会合がありました、
ある程度は事前に予想されていましたが、
YCCの修正(≒長期金利の上昇容認)が決まりました。

・以下の(注)は読み飛ばしてくださってもいいですよ。

注)YCCはイールドカーブ・コントロールのことで、まあ簡単に言えば長期金利の引き下げ政策です、
  日銀は世界で初めて長期金利の誘導を行いましたが、いまだ世界でYCCを行うのは
  日銀だけです。7月の会合に続き、今回さらに長期金利の上昇を容認した格好です、
  7月時点では長期金利の「厳格な上限」を1%としていましたが、今回は「上限のめどを1%」に
  変更しました。

従来、上限を1%として厳格に設定したものが、今回「上限のめど1%」に変わった
だけですが、これは実質的には長期金利上昇の容認です、
おそらく日本経済にいろんな影響が出てくると思います。

今回はそのあたりのお話を少ししたいと思います。

長期金利(10年国債の利回り)は決定前からすでに上がっていましたが、
この決定を踏まえさらに上昇し、現在は0.961%(2023.11.1、AM10時)です。

たとえばアメリカの長期金利は5%近くありますので、それ比べると
0.96%は低いとお感じかもしれませんが、去年の今頃は0.2%ほどでした、
現在の0.96%は2012年4月以来の高金利ということになります。

ではまずは金利上昇のいいところからお話ししましょう。

例えば個人向け国債の利率です、
直近に発行された変動10年型(第163回)をみると適用利率は0.51%になっています、
一方で1年前はといいますと、0.16%にすぎませんでした。

変動10年型は、直近の「10年国債の利回り×0.66」で利率が決まりますから、
今後、日本の長期金利が上がってゆくと、個人向け国債(変動10年型)の
利率も上がってゆくことになります。

注)個人向け国債は、ほかにも「固定5年」「固定3年」があります、
  変動10年のほうは、すでにお手持ちの利率も含め、上記の計算式によって、
  直近の10年国債利回りに連動して動きます。

現在の長期金利はすでに0.96%まで上がっていますが、
これが例えば1.5%まで上がるとどうでしょう。

その場合、個人向け国債の利息は1.5%×0.66=0.99%になります、
実際はここから約20%源泉徴収されまますが、
それでも0.99%といえばほぼ1%です。

為替の変動をいやがる人たちや、
リタイア後にまとまったお金を手にされたかた、
株や投信などでリスクを取りたくない人などにとって、
現実的な選択肢になるでしょう。

まあこのように、
運用側から見ると金利の上昇にはいい面があるのです。

逆に悪い面もあります。

一例を挙げると住宅ローンです、
たとえばフラット35のような固定金利型ローンは、
長期金利に連動して返済金の利率が決まります。

住宅ローンは20年、30年といった長期のローンですし、
金額自体も大きいです、なので例えば1%の金利上昇は、
支払い総額に大きな影響を与えることになります。

一方で変動金利型のローンはどうでしょう、
住宅ローンの変動金利は短期金利(≒日銀が決める政策金利)に連動しますので、
今回のように長期金利が上がっても影響はありません。

ただ日銀はすでに政策金利(短期金利)の引き上げも
視野に入れており、来年の前半あたりには政策金利を上げると
みられています。

さらに来年以降のインフレの状況によっては、
利上げの幅を広げてゆく可能性もあるでしょう、
その先のことは神のみぞ知るですが、もし日本の経済が長期のデフレから脱出し、
少しマシな状態になるのなら、政策金利も正常化に向かうと考えるのが素直です。

このような観点から、収入に見合わない大きな住宅ローンを、
変動金利で借り入れている人は少し注意したほうがいいでしょう。

以上2つだけわかりやすい例をとりあげましたが、
金利の上昇は他にもアチコチ私たちの生活に影響を与えます。

金利が上がれば政府の借金の利払いが増え、
財政がさらに悪化するでしょう。

金利が上がれば大きな借り入れをしている会社の利払いが増え、
退出を迫られる会社も出てくるでしょう。

金利の上昇は、一般的にインフレを伴います、
私たちが日々食べている食品や外食、通信費や衣服代など、
さまざまなモノやサービスの値段が上がるでしょう。

一方で金利の上昇は、景気の拡大によって起きる面があります、
いわゆる「良い金利の上昇」です、この場合は政府の税収が上がりますから、
逆に財政が改善する可能性もあります。

金利の上昇によって、会社の淘汰が起きるかもしれません、
弱い会社やゾンビ企業などから強い会社に人が移動すれば、
人材の有効活用につながりますし、従業員の給料も上がります、
そして日本全体の競争力が高まる可能性もあります。

20年にもわたって異常な低金利のなかで生きてきた私たちにとって、
さまざまな苦痛を伴うことが起きると思いますし、
逆にそれだけたくさんの良いことも起きるでしょう。

いずれにしても私たちは、
金利の上昇に私たちは無関心でいるべきではないと思います。

 

では今回はこのへんで。

(2023年11月1日)




このコラムが一週間早くお手元に届きます
当社代表の田中が週に一回お届けする無料メルマガ「一緒に歩もう! 小富豪への道」
は下記からご登録いただけます。

「T's資産運用コラム」と同じ内容を一週間早くご覧いただけます、是非ご登録ください。

【購読登録】 メールアドレスご入力ください :
『まぐまぐ!』から発行していますので、ご安心ください。
totop